活動報告

農地の集約化

  • 米山 隆一
  • at 2013/3/20 22:33:13

 TPPの議論で、私がなぜ農地の集約化にこだわるのか質問がありましたので、稿を改めて回答します。

 私が農地の集約化を主張するのは、これが日本農業(稲作)の生き残りの為に必須だからです。
 最近よく指摘されていますが、日本の農業従事者人口は、現在200万人に過ぎず、その54%が65歳以上です。この人口は、2030年には、高齢化により72万人にまで減少すると予想されています。極めて単純な計算(農業従事者の高齢化はより進みますが、そこは無視して)で、これからの20年間で農地を3倍に集約化しない限り、TPPに参加しようがしまいが、日本の農業生産は1/3になります。「先祖伝来の田畑は手元に置きたい」という気持ちは理解できますが、このままでは、間違いなく日本の農業は、TPPとは全く無関係に、高齢化による農業従事者人口の減少によって、消滅します。

 では、日本の農業人口の減少をもたらしているものはなんでしょうか?それは端的に「収入の低さ」です。日本の農家の平均農業収入は100万円にすぎません(無論農外収入で生活費が賄われています)。これで、後を継げというのは、無理です。
 これに対してEUの農家はおよそ10倍、アメリカの農家はおよそ100倍の耕作地をもっています。単純計算で恐縮ですが、日本も農地をEU並みに10倍に集約化すれば収入は1000万円になり、十分若者がやりたい職業になります。
 因みに現在、15ha程度を耕作している大規模農家の収入は1000万円程度であり、大規模化-集約化さえすれば農業が決して割りの悪い産業でないことは現実に立証されています(無論それは現在の米価が維持されることが前提ですが、そこはTPPでも聖域として守るべきところだと思います)。

 では、なぜそれが出来ないのでしょうか?最大の理由は農地の買いにくさでしょう。現在農地を買うには知事若しくは農業委員会の許可を得る必要があり、株式会社はこれを保有できません。そこを株式会社の農業経営を認め、かつ農地の取得に税制上の優遇装置を設ければ(現在いくつもの優遇措置はありますが、極めて限定的で、かつ当然株式会社への適用はありません)、それこそ安倍ノミクスで過剰流動性を手にした企業にとって、農地は非常に良い、適切な投資対象になります(まとまった土地さえあれば、まじめに耕作すれば十分な収益が上がりますので、これは「投機」では全くなく、まっとうな「投資」です)。そうなれば、私は割とすぐに「農地価高騰」が生じると思います。そして、現在の農村の疲弊状況を考えれば、高値が付き、かつ相続税を含めた優遇措置が付いた土地を、高齢化した農家は売るでしょう。

 それを「農村の破壊」「古き良き日本の伝統の破壊」というのは、容易です。しかし、その「古き良き日本の伝統の保存」が、「小規模農家にも先祖伝来の土地を守らせる」という政策が、実際に農村に何をもたらしているのか、私たちは直視すべきです。確かに、小さな田んぼを寄せ合う山村の棚田は美しいでしょう。しかし、その山村の人口は減少を続けています。今のまま行けば、30年後、ほぼ間違いなく、あの棚田は、耕す者のいない荒れ地になります。

 選挙のたびに「故郷を守る」「日本の伝統を守る」というセンチメンタリズムを掲げ、「株式会社」「TPP」といった新しいことに感情的な「No」を言い、結果何の対策も打たずに、限界集落を老いるに任せ、朽ちさせていくことが、本当に、日本の農業を、日本の農村を、私の(私は魚沼市出身です)、私たちの故郷を守ることでしょうか?

 私は、そうではないと思います。政治を志す者は、つらくても有権者に真実を告げ、それに対する現実的対策を考え、たとえそれが今までの方法と違っても、自ら有権者を説得し、勇気づけてそれを実行すべきです。「有権者の声を国に伝える」という言葉のもとで、有権者とともに涙を流すことは、重要です。しかしそれが、有権者の気持ちに迎合し、国に向かってほとんど何の効果もない「No」を訴えながら、結局何一つ有効な対策を打たないことになってしまっては、一時の救いにはなっても、本当のところ誰一人、何一つ救えません。

 私は、ほかでもない私の故郷を守るために、農地の集約化を進め、若者が、産業として、誇れる豊かな職業として、取り組める農業を、ほかでもないこの新潟に、作りたいと思います。そしてそのためには、農地の集約化は不可欠だと、考えます。

 勿論、私の考えが間違っていれば、何時でもそれは改めます。是非ご議論を提起していただければと思います。


  • コメント (3)
  • トラックバック (0)
トラックバックURL :
http://www.election.ne.jp/tb.cgi/94742

コメント

興味深く拝見致しました。
TPPへの参加・不参加を問わず、農地の集約化は今後の課題であると考えています。
そこで集落の中における農地の距離が離れている場合、どのように集約化を進めるかということが1つ大きな問題であると思います。
これは高低差のある棚田においても同じことです。

この山口県山陽小野田市の例
(農林水産省:http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1207/spe1_03.html)
のように、農地が近接していれば良いのですが、そうでない場合(キロ単位で農地が分散している場合)は、どのような対策が可能でしょうか。






  • Posted by M
  • at 2013/03/22 19:10:57

米山さんの主張って、国債の発行に関する考えと、建設業重視かIT重視かを省くとあまり安倍首相と変わらん気がするのですが
国債の発行のところが決定的だと言われるかも知れませんが
農地の集約化や株式会社の参入はほとんど一緒の気がします

それと、双方ともに・・というか、政治家は農協の弊害に全く触れませんね
特に新潟を地盤とする人が知らないとは考えづらいのですが

たとえば、農業に株式会社が参入してくればその資金調達で農協を排除するであろうこと(普通の銀行、信金、そして市場から調達するでしょう)
資材調達は農協の身内の天下り企業が大損害を受けること(そんなアホなところから購入しようとする間抜けな企業は無いでしょ)
農協が集約化、株式会社化に反対する理由って(TPPに反対するのも)、日本の農業を考えているわけでは無くて、
「カモがいなくなる」からですよね

だれも、そこに触れないのが、本当に不思議です

「M」さん「いちろう」さん、コメントありがとうございます。返信が長くなりましたので、「農地集約化② ~自民党と日本維新の会~』としてアップいたしました。ご参照いただけると幸いです。

  • Posted by 米山隆一
  • at 2013/03/25 08:39:40

エレログTOP | エレログとは | 運営会社 | 免責および著作権について | お知らせ

政治家ブログ”エレログ”地方議員版ができました。参加お申し込みはこちらから

政治家専門サイト ele-log 国政版 お申し込み 政治家専門サイト ele-log 地方版 お申し込み
国会議員、都道府県知事、市区町村長、都道府県議、市区町村議、および立候補予定者専用

Copyright by Promote committee of Online-Election.,2001-2007, all rights reserved.
ele-log and the ele-log logo are registered trademarks of
Promote committee of Online-Election