ニュースの感想

 昨日、安倍総理が集団的自衛権行使に向けた記者会見を行いました。

 私自身は、集団的自衛権の行使、憲法解釈の変更に賛成ですので、結論そのものにさしたる異論はありません。
 しかし、記者会見で見せた安倍総理の他の政策に際しては見られなかった熱意と隠しきれない高揚感には、違和感を禁じ得ませんでした。

 そもそもですが、集団的自衛は、敵国に対しては「自衛権の行使」でしょうが、同盟国に対しては、「同盟国を防衛する義務の履行」です。それはすなわち、今まで、憲法9条とアメリカの防衛力の傘に隠れて支払わずに済んだ防衛のコストを、我々自身が自ら払わなければならないことを意味します。
 安倍総理は「戦後レジューム」すなわち、「防衛・軍事のほとんどをアメリカに依存し、日本は経済発展に特化する」と言う「吉田ドクトリン」を、「日本の誇りを失わせた悪しき体制」とお考えとお見受けします。
 しかし、賢明な故吉田首相は、何も日本の誇りを失わせるために、防衛・軍事を放棄したわけではありません。敗戦で極度に荒廃した日本に、経済発展と防衛・軍事の二兎を追う力はないことを冷徹に見極め、日本の将来の為に苦渋の、しかし正しい選択をしたのだと私は思います。そしてその結果、日本は世界第2位の経済大国となり、私たちは日本を、世界でも最も豊かな国の一つとして誇れるようになったのです。もしあの当時、吉田首相が韓国や北朝鮮の様な重武装の道を選んでいたら、日本がこれほどの発展を遂げることはなかったでしょう。「吉田ドクトリン」が、少なくともあの時点において、「日本の誇りを取り戻す」最も適正な道であったことは、歴史が証明しています。
 そして、その「吉田ドクトリン」を放棄して集団的自衛権の行使に進むということは、防衛をアメリカに任せて、国内の資源を経済成長につぎ込むことが出来た幸福な時代が終わり、今まで経済や、福祉や、教育に使ってきたお金を防衛・軍事につぎ込まなければならない時代が、すなわち、防衛・軍事にお金をつぎ込む分だけ経済や、福祉や、教育に回せるお金が減る憂鬱な時代が到来したことを意味するのです。

 繰り返し、私はその選択それ自体は、やむを得ないことだと思います。中国の台頭、アメリカの相対的地位の低下によって、「日本国内の戦後レジューム」ではなく、「国際的な戦後レジューム」が変わってしまったのであり、「アメリカ追随からの脱却」どころか、「アメリカからの強い要請に応じて」日本が応分の負担をしなければ、極東、東南アジア、ひいては世界のパワーバランスを保ちがたい憂鬱な時代が到来したからです。

 新たな国際情勢の中で、集団的自衛権は、好むと好まざるとに関わらず、現実として行使(履行)せざるを得ないものでしょう。しかしそこには、当然「コスト」が伴います。高揚感に囚われてその議論を忘れ、国民の批判を恐れてその中身を隠すことなく、これから防衛にどれほどのコストがかかるのか、いまだ回復しない経済の停滞と世界まれにみる少子高齢化に苦しむ日本が、根拠の薄い国土強靭化という大公共事業と、震災からの復興と、経済成長と、高齢化社会への対応と、すべてにいっぺん取り組むことは本当に可能なのか、不可能ならば何を削るべきなのか、やむを得ないとしてもどうやって防衛・軍事のコストを抑えるのかを、今こそ我々は考えなければなりません。

 敗戦の屈辱の中で、日本国の本当の実力を直視し、しかし誇りを失わず、50年後の日本の繁栄を築く賢明な選択をした吉田首相の真価、すなわち「戦後レジューム」の真価を、我々は今、問い直すべきだと思います。


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コメント

好むと好まざるとにかかわらず戦争になった時、そのコスト、終わった後の回復するためのコスト。そもそも戦争防止のためのコスト、あまりにも一般人は知らなさすぎます。
結果的に、経済力があるだけでも戦争防止につながっていることも。

  • Posted by 名無し
  • at 2014/05/18 19:22:16

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