さて、前回の「日本列島スマート化計画② ~景気対策(1) 安倍ノミクス~」で「インフレになると、企業がお金を持っていると損になるので、投資を行うようになる。」と書きましたところ、早速のところ、読者のお一人から「そんな簡単に企業は投資をしない!」とおしかりを受けました。

 まさにその通りで、いくら2%のインフレが達成されて、現金を持っていると損になるからと言って、「投資機会・収益機会」がない限り、企業は決して投資を行いません。
 安倍ノミクスは、日本経済を非常にうまくハンドリングしているように喧伝されていますが、実のところ現在行っているのは、円をバカバカ刷って「資産インフレ(期待)」を発生させ、無理やり株高を生じさせているにすぎません。本当の勝負は、安倍総理自身が言っているように、これが「企業の投資」さらには「企業の収益」につながるかです。

 そのためには、安倍総理が高々と謳い上げた「女性の力の活用」や「(iPS細胞等の)研究開発の促進」、更には「国家主導のトップセールス」等々、やるべきことは非常にたくさんあります。しかし、前2者は、その効果が出るまでに長期間を要する上に効果も不確定で、経済対策としては「スピード」の面で疑問が残ります。「国家主導のトップセールス」は即効的かつ派手で、「スピード」に問題はありませんが、その対象となる産業は限られ、「量」の面で十分でありません。

 ある程度の量の投資を、ある程度速やかに実現するためには、「今まで規制によってできなかった投資を、規制緩和によって可能にする。」ことが、最も現実的であると、私は思います。
 株式会社の病院経営、混合診療の容認、株式会社の農地保有の容認、株式会社の学校経営の容認等は、今まさに巨大マーケットが存在するにもかかわらず規制によって投資が行われていない分野であり、是非、大胆な規制緩和を進めるべきものと私は考えます。

 この様なことを言うと、すぐに「利益一辺倒」「競争至上主義の弱肉強食」で、「貧しい人が医療受けられなくなる。」「農業が崩壊する。」等々の意見を言われる方がおられます。
 しかしたとえば、それこそ「利益一辺倒」「競争至上主義」の外食産業、医療産業で、貧しい人は食事をできなくなったでしょうか?服を買えなくなったでしょうか?答えは全く反対で、今や280円で相当程度においしい牛丼を食べられ、2980円でどこに着ていっても恥ずかしくないボタンダウンシャツとチノクロスパンツのセットが買えるようになりました。医療も農業も教育も、「利益一辺倒」の「競争」によって、むしろサービスの質は向上し、値段は低下する可能性の方がはるかに高いと、私は思います。

 ただし、そのためには、単なる「自由競争」ではなく、「適正で実効性のある監督に基づいたコントロールされた競争」が実現される必要があります。
 小泉総理の構造改革路線-規制緩和路線は、たしか「ライブドア」に代表される、ある種の「不良業者」を生み出しました。これを多くの人は、「規制緩和の負の側面」と評価しています。
 しかし、本当に悪かったのは、規制緩和そのものではなく、「ライブドア」のような不良なプレーヤーの問題点を速やかに把握して、どのような行動がどのようなルールに反するのかを明示してその是正を求める「審判」がいなかったことであると、私は思います。
 スポーツは純粋な「競争」ですが、「明確なルール」と、その実行を担保する「強力な審判」がいて初めて、ライバルがお互いを高めあう高度でエキサイティングなプレーが実現します。
 経済も全く同じで、「規制緩和」による競争は、同時に、「経済ルールの明確化」と、「ルールを順守させる体制の確立」が伴わなければなりません。小泉改革は、この両者がかけていたから失敗したのだと、私は考えます。

 ずいぶん長々と書いてきましたが、以上をまとめると、私は、安倍ノミクスが実際の企業の投資拡大、収益拡大につながるには、次の3点が必須であると考えます。

① 株式会社の病院経営、混合診療の容認、株式会社の農地保有の容認、株式会社の学校経営の容認等の大胆な規制緩和。

② 上記の緩和において、守られるべきルール、行政運用の明確化(行政の透明性の確立)。

③ ルールを事後的に監督し、これを実行させるための行政機構の拡充(行政の実効性の確立)。

 繰り返しになりますが、現在一世を風靡している安倍ノミクスは、第三の矢として①を掲げていますが、この部分で既に完全に腰砕けになっており、②、③は言及もされていません。是非、「単なる資産インフレ」にとどまらない真の景気回復を実行する為に、①のみならず、②、③を実行して、「効率的で、公正で、公平な市場における適正な競争」を実現したいと思います。


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