ニュースの感想

消費税と国土強靭化

  • 米山 隆一
  • at 2012/6/25 09:45:56

消費税と国土強靭化

 

非常に久しぶりのアップで恐縮です。

 

 話題の消費税増税ですが、私は賛成です。あちこちでお話ししていますが、私は現在長岡の併設高齢者専用賃貸住宅併設クリニックである「長岡ナーシングホームクリニック」を運営する医療法人社団太陽会の理事長を務め、診療に携わっています。

 

 この施設・クリニックは勿論まだまだで、十分なサービスが提供できているかというとつらいところもあるのですが、しかしこの施設に入るのでさえ、月20万円のお金がかかります。細部を一切省略してざくっというなら、現在、年金なり子供の支援なりでこのお金を払える高齢者はまだしも人生の最終章まで相応の医療・介護を受けることができますが、そうでない人は、公的施設に入るという幸運(現時点では幸運と言わざるを得ません)に恵まれない限り、人生の終盤において、十分な医療・介護を受けることにさえ、難渋するというのが、日本の福祉の現状であると、言わざるを得ません。

 

 「医療・社会福祉の崩壊」はいつかくる未来の問題ではなく、今ここにあり、今解決しなければならない問題なのです。

 

 民主党が掲げた公約、三党合意の経緯、その他もろもろの事情に、異を唱えたいことは多々あります。しかしそれでも、今困っている人たちを、今救うために、政治はこの決断を避けてはならないと、私は思います。

 

 一方で、自民党が提出した、民間資金も含めて10年間で200兆円を支出する「国土強靭化」には私は明確に反対します。消費税の増税は5%でせいぜい10兆円にすぎず、年間20兆円を国土強靭化に支出するくらいなら、そもそも消費税を上げる必要すらないからです。

 

 未曽有の大震災に遭遇した私たちが、全力を挙げてそれに備えたくなる、その気持ちはわかります。しかし、です。いかに私たちの目の前で起こったとはいえ、東日本大震災は、1000年に一度級といわれています。過去の記録をさかのぼって、多少大目にとらえても、あの規模の地震は200年~300年に1回しか起こっていません。そして東北の広大な範囲が被害に見舞われたとはいえ、浸水面積は561平方キロメートルで日本の国土の0.1%、岩手、福島、宮城3県の面積すべてを足し合わせても、日本の国土の10%です。つまりは、あのクラスの地震が、日本の「特定の地域」-「あなたの家のあるその場所」で起こる可能性は、2000年~3000年に一度、もしくは、1万年に一度だということになります。

 

今我々がどれほどの英知を集約して、どれほどの設備を作っても、耐用年数は数百年が限度でしょう。200兆円かけようが300兆円かけようが、その設備は数百年後には古くなり、あとの17001800年は何の備えにもならない可能性のほうがはるかに高いといえます。その、ほぼ90%が無駄になる投資に200兆円の資金を投じ、今目の前で病に苦しむ患者さん、今目の前で介護を必要とする高齢者を放置することは、本末転倒と言わざるを得ません(因みに今回の震災に必要な復興費用は20兆円といわれています。そうだとすれば、被害に会う人には大変恐縮ですし、非常に冷たいと思われるかもしれませんが、最も効果的な災害対策は、毎年1000億円づつ積み立て(200年で20兆円です)、「被害が起こったところ」に迅速かつ早急に資金を投下して、復興に努めることではないかと、私は思います)。

 

病気、老い、天災と、我々の人生と社会は、多くの苦難にさらされています。それらをすべてこの世からなくすることができるなら、それに越したことはありません。しかし、神ならぬ我々に、それは過ぎたる望みというものでしょう。我々は、限られた資源と、限られた時間の中で、我々のできる範囲で、できるところから、少しでもこの世から苦しみを減らすために全力を尽くすべきであり、その合理的配分、管理を行うことこそが、政治の仕事であると、私は思います。

 

 自民党には、1000年、2000年に一度の災害に備えるその前に、今の日本の医療、福祉、そして何より、明日の若者の未来に備えてほしいと、心より申し上げたいと思います。

 
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コメント

私が老人といわれる時代には、尊厳死を認めてもらえるようになっていると嬉しいです
生命維持装置をつけて、ただ生きているだけの状態にはなりたくないです
医療機関の人は、その方が儲かるかもしれませんが・・・

今まで話題になるたびに、潰されてきましたよね

o(><;)o超久々の更新嬉しいでやんす!

  • Posted by あぐー
  • at 2012/06/26 00:58:06

いちろうさん、あぐーさん、コメントありがとうございます。

私も、おっしゃる通り、尊厳死は、認められるべきだと思います。多少不遜な言い方ですが、いわゆる植物状態の方の延命措置は、アクティブな治療を行わない分、一般に思われているほど「儲かる」ものではなく(その分の人員と場所を、「手術」等にかけた方が、基本的には「儲かり」ます)、尊厳死が認められないのは、医療機関の経済的問題というより、一般社会がそれを受け入れるかどうかという「社会的倫理観」の問題の面が強いと思います。

今後議論を深めたうえで、国民的意思決定が必要でしょう。

  • Posted by 米山隆一
  • at 2012/06/26 21:57:08

増税≒税収増
税率が上がったところで税収は上がるのでしょうか?そもそも消費しようにも財布にお金がないわけで、可処分所得が増えない限り税収は上がらないと思われます。今政府がやるべきことは財政出動による内需拡大です。デフレ下で増税なんて素人でも馬鹿げたことだと気づきますよ。米山さんは頭の言い方なんですから少し考えたら理解できると思いますが…。ちょっと期待はずれですね。

  • Posted by 長岡市民
  • at 2012/06/27 13:25:26

あらお返事いただけるとは

そうですか、ごてごてした機械つけて身動きしない(出来ない)人間と一緒に、ずっとメンテするより手術の方が儲かりますか
ただ、私は国民合意があろうがなかろうが、あんなふうにされるのはごめんです
どちらかというと、福祉をある程度切り捨てて、死にたい人間はさっさと死なせてくれた方がありがたいんですが
寝たきりになろうが何しようが無理矢理延命することが、「福祉だ」なんていう、そんな世の中の人のことを理解できません

消費税は私は反対です
高所得者の所得税もある程度上げればみんなの自己満足は出来るかもしれないですが(ただ、いまの最高税率の上に、5000万とか1億稼いでる人の最高税率を50%くらいにするのは有りかもしれませんが、真面目に仕事をして、税金を半分以上持って行かれるのはやってられんでしょう・・・鳩山家みたいにお小遣いのところはまた別ですが)
そんな金額は微々たるものだし、どうせ役人や政治家が吸い取って終わりで我々には関係ないし
どうせなら紀伊国屋文左衛門みたいに稼ぎまくったら、使いまくる人(寄付もしまくったそうですが)が大量にいた方が金回りも良くなりし、財政も大助かりでしょう

とは言っても、ホンダは拠点工場をアメリカに移すし、トヨタは国内の製造上限を設定しちゃったので、金遣いの荒い人間がいっぱいいても国内ではお金はもう回らない気もしますけど(税金なんかますます無理でしょ)

いちろうさん、コメントありがとうございます。

おっしゃる通りだと思います。私も現時点で、この福祉を維持するなら、消費税10%は避けられない選択だと思いますが、日本の社会保障に多くの無駄があることも、また所得税、相続税、法人税を含めた税体系全体に改めるべき点が多々あることも、全く否定するつもりはありません。

日本の社会保障制度も税制も、右肩上がりの高度成長期に、つぎはぎに作られた制度にすぎません。経済の在り方、社会の在り方が一変してしまった現在において機能不全を生じるのは、むしろ当然だといえます。

行き詰った幕藩体制の刷新に明治維新という変革が必要だったように、現代の日本も、大きな変革を必要としているのだと思います。そして明治維新がそうであったように、それには「変革」そのものではなく、それに引き続く地道な制度づくりの努力こそが、重要なです。

民主党による改革がとん挫しつつあるからと言って、自民党的復古主義に戻るだけで、現代の日本の問題が解決するはずもありません。

真の改革-時代に即した、一貫した体制を作り上げる継続的努力、それこそが今求められていると、私は思います。

  • Posted by 米山隆一
  • at 2012/06/28 08:53:02

長岡市民さん、コメントありがとうございます。

確かに「税率を上げたからと言って、必ずしも税収は上がらない」ということそれ自体は、事実だと思います。

これはもともとラッファーカーブといわれる理論で、税率0%なら当然税収は0、でも税率100%にしても誰も働かなくなるから税収は0、だから0%~100%の間のどこかに税収が最高になる税率-「最高税収税率」があって、現在の税率がその「最高税収税率」より高いときに税率を上げると、却って税収は下がる、というものです。この理論はレーガノミックスの基盤となり、その後中曽根首相、小泉首相と続く新自由主義的経済政策の基盤となりました。

ただ問題は、いったいどの点が「最高税収税率」なのか、全くわからないことで、「税率を上げたら却って税収が下がる可能性がある」だけであって、勿論「税収が上がる可能性」もあり、そこは予想がつきません。しかし、現在の消費税率は諸外国と比べて決して高くなく、また消費税は景気の動向に対して比較的安定的ですので、予想としては、消費税1%の増税に対して1兆円程度税収は上がるものと思われています。要するに、「消費税を上げたら税収が下がる」は可能性として否定はできないが、実際にそうなる確率は低いものと思われます。

また、「今必要なのは財政出動!」という意見もよく拝見します(特に小沢さん系の方はそういう主張をされます)。ところで「財政出動」というのは政府支出を増やしさえすれば、その費目が公共事業費であれ、社会福祉費であれその効果は変わりません。そうだとすると、40兆円の税収に対して毎年90兆円の社会保障給付費を支出し、のみならずそれが毎年1兆円規模で増加している現在・・・バブル崩壊後25年(!)は、期せずして「世界まれにみる大規模財政出動を延々やり続けている状態」だといえます。25年間、50兆円規模の財政出動を続けて全く効果がなかったのに、いまさら3兆円や4兆円の公共事業費を上積みしたところで、内需拡大にはほとんど何の効果も及ぼさないことは、すでに立証済みと、私は考えます。

未来は、常に不確定です。どのような対策も、うまくいく可能性も、失敗する可能性もあります。その中で人はどうしても、自分にとって苦しい対策の失敗の可能性、楽な対策の成功する可能性を、高く見積もりがちです。そこを、あくまで冷静にさまざまな対策の可能性を見積り、苦しい苦しくないとは無関係に成功の可能性が最も高い対策を選択し、説明し、そして実行することこそが、リーダーの役割であると私は思います。

  • Posted by 米山隆一
  • at 2012/06/28 08:56:03

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