名無しさん、20代さん、から如何に賃金を上げるかに関するコメントをいただきました。「賃金を上げるにはどうするか」だけではなく、「日本の景気を回復するにはどうすべきか?」と言うことで記事を書かせていただきます。

 先日の日経新聞で、最高益を計上した上場企業がリーマンショック後最高となったことが伝えられており、安倍ノミクスは一見好調に見えます。しかし、私が安倍ノミクスについて何より不思議だなと思うのは、「日本が不景気になったのは、デフレのせいであり、デフレさえ解消すれば、日本経済は回復する。」と主張しているように見えることです。

 私は、

「そもそも経済学的に、景気が悪くなるとデフレになり、景気が良くなるとインフレになります。つまりデフレは景気後退の結果であって、原因ではありませんし、インフレも好景気の結果であって、原因ではありません。
日本の景気が悪くなったにはなったなりの理由があり、そこを解決せず、デフレ・インフレの問題ばかり叫んでいても、短期的にはともかく、長期的成長は見込めません。」

と考えるからです。

 もうすっかり記憶が薄くなってしまいましたが、1980年代日本の経済は一世を風靡していました。それがバブル崩壊以後もう30年近く、復活していません。私は、その原因は、デフレが悪いとか、グローバリズムが悪いとかと言う外部的なものではなく、本質的には、日本経済そのものに、問題点があるのだと思います。問題点は多岐にわたります。

①まず、アメリカと日本で多少なりとも先端医療機器の開発現場に立ち会ったものとして、岩盤とも言われる日本の規制や基準のあいまいな行政指導は、大きく日本のビジネスの活力を損なっています。
②一方で旧来型の産業が必要以上に国家から保護され、国家の資源と人材が斜陽産業に囲い込まれ、成長分野に割り振られないという問題もあります。
③またそういった国家の制度以前に、上司への絶対服従、長時間労働、滅私奉公を旨とする日本の組織文化自体が、実際に現場で働く社員のエネルギーと創造力を奪い、更には、会社自体の発展の機会を、失わせているところも多々あります。
④ 更に不安定な社会保障制度が、国民の消費を委縮させ、それ以上に、国民の行動を非常に保守的にさせて、若者からさえ(むしろ若者からこそ)「チャレンジする機会」を奪っています。
⑤ そして最後に、高校までの教育は世界に誇れるものだと思いますが、大学以降の高等教育のレベルは正直世界から見れば見劣りし、日本の発展を支える人材の輩出では、改善の余地があります。

  以上、ざっと問題を列挙しましたが、これを解消するには、

(1) 国家の産業政策の在り方-企業の競争の場としての「大胆な規制緩和による新たな国内市場の創出」とその「市場が適正に動くための新たなルール作り」
(2) 業界間での新陳代謝、すなわち企業や働く人の入れ替わりのルールの作成
(3) 国民の多くが働く場としての「労働市場」のルール整備と、ルールを徹底する行政力の確保
(4) 国民のセーフティネットとしての、少子高齢化に対応する社会保障制度の整備
(5) 次代を担う世代を教育する高等教育の整備

等々、たくさんの対策が必要となります。
 すべてを述べていくとあまりに長くなりますので、質問のあった(3)労働市場だけにフォーカスすると、ここでも、

a. 正規雇用があまりに守られているために、むしろ正規雇用を増やしづらくなっており、非正規が増えてしまっている。→たとえば年収分を支払うことを条件に、金銭解雇を認める。
b. 一方で正規雇用者は、極めて長時間のサービス残業や有給未消化を強いられており、これが実質的な賃金水準を引き下げている→サービス残業を徹底的に取り締まり、違反した企業には強いペナルティを課すとともに、未消化の有給は買取を義務付ける。
c. 同一労働同一賃金の原則を進め、正規労働者と非正規労働者の格差を解消する。

などなど、打つべき対策は多々あります。

 (1)~(5)の対策が打たれて日本経済全体の実力が上がり、それによって労働需要が高まり、その需要増がa.~c.の対策によって、正規雇用数の増加と、賃金の増加に結びついてこそ、初めて日本全体での賃金総額と、一人一人が手にする賃金水準が上昇するのだと、私は思います。

 安倍ノミクスは、「デフレを脱却すれば、景気は回復する。」「安倍総理がトヨタ社長にお願いすれば、給与が上がる。」と言う、きわめてわかり易いもので、それゆえに人気を博していることは、分からないでもありません。

 しかし、経済は極めて複雑なものであるうえ、他国との競争で結果が出る「勝負事」ですから、「○○さえすれば大丈夫。」と言う魔法の杖は、そもそも存在しません。

 面倒でもわかりにくくても大変でも、日本経済の問題点を一つ一つ取り出して、ふさわしい対策を打ち、その対策の下で、国民全体で根気強く改革に取り組む「真の努力」を導くことこそが、政治の役割だと私は思います。

 それを成し遂げたとき、日本経済はかつての輝きを取り戻し、すべての国民が胸を張って

”Japan is back. Not by magic economics, but by real endeavor of all Japanese people(日本は復活した。魔法の経済学によってではなく、すべての日本国民の真の努力によって)”

と言えるのだと、私は考えます。


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コメント

そもそも政府は景気対策として財政出動をやりすぎです。
日本の景気の悪さは、米山さんが主張するようにろう度市場の未発達や規制が原因だと思います。
たとえば耕作放棄地をサラリーマンが買って農業に転職しようとしても、一定面積を買わないと農家としては認めてもらえない、タクシー業も小泉政権の時は市場原理に任せて参入と退出を促すはずが、また規制でガチガチになりました。私は天下り先を確保するためにしか見えません。
こういう規制を排除することの方が、今の日本には経済対策になるのではないでしょうか。

  • Posted by 名無し
  • at 2013/12/01 12:34:29

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