活動報告

The Logic of Japanese Politics ~10年前の警告~

  • 米山 隆一
  • at 2009/10/07 20:17:54

 最近 Gerald Curtis 氏著の The Logic of Japanese Plitics を読んでいます。この本は2000年に書かれた本なのですが、その中で既に今回の選挙結果を示唆する分析がなされており、慄然とします。序文の一節を引用すると、

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The loss of a public consensus on natiohal goals, the decline in the authority and prestige of the bureaucracy, the fragmentation of interest groups, and the erosion of the LDP’s support base continues unabated.  The volatility in voting behavior that is discussed in chapter six in the context of the 1997 upper house election became evident once again in the lower house election held in June 2000.

国家全体の目標が無くなり、官僚組織は信頼を喪失し、利益団体は分裂し、自民党の支持基盤が縮小しているという状態は継続している。1997年の参議院の投票で明らかになった有権者の投票行動の「振れ」は、2000年6月の衆議院議員選挙でも再び明らかになった。

Although there are elements in the LDP that believe party practice and policies need to change, those who currently lead the party have been resistant to change in their response to challenges.  Instead, they have tried to sustain the kind of politics that developed decades ago, an effort that is producing new and complex political tensions within the LDP and acceleration the LDP’s loss of support among the urban middle class and the growing number of floating voters who support no political party and account for half of the electorate.

自民党のあり方と政策を変えなければならないと信じるに足る幾つもの理由があるにもかかわらず、現在の自民党の幹部達は、変化に対して抵抗するという反応を示している。彼らはむしろ、数十年前に作られた政治システムを維持しようと試みており、それが自民党内に複雑な軋轢を生み出すと同時に、都市部の中流階級と、有権者の半数を占める無党派層における自民党離れを加速している。

How these political tensions are ultimately resolved and what kind of new party system will eventually emerge will be contingent on how key political leaders respond to perceived changes in the political structure.  At some point, the LDP may well turn to a reformist leadership and once again expand its support among the urban electorate.  It is also conceivable that the LDP will split, as it did in 1993, and spark a total realignment of political forces and the creation of a new party system.  It is also possible that other parties will continue to increase their representation in the Diet and drive the LDP out of office, although the results of the June 2000 lower house election suggest that this is not likely to happen for at least two or three general elections.

これらの政治的圧力が最終的にどのような政党間の関係となって現れるかは、鍵となる政治的リーダー達が、現在明らかになっている政治構造の変化にどの様に対応するかにかかっている。どこかの時点で、自民党が変革のリーダーシップを発揮して、再び都市部の有権者の支持を集めることもあり得る。1993年の様に自民党が分裂し、大規模な政界再編が起こり、全く新しい政党関係が出現することも考えられる。自民党以外の政党が議席を増やし続け、自民党を政権の座から追いやる事も勿論考えられるが、2000年6月の衆議院議員選挙の結果を見る限り、少なくとも次の2,3回の総選挙では起こりそうもない。
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 Curtis 氏流に言うなら、「既に明らかになっていた様々な要素は、2000年から2009年現在まで継続して自民党の支持基盤を減少させ続けた。2001年には小泉政権が登場し、改革の機運を高めて自民党支持の回復に一役買ったが、小泉氏の退場と共に、自民党内の政治力学は『数十年前に確立した政治システム』に後戻りしてしまった。そして、やせ細った支持基盤を頼りに、『古いシステム』への有権者の嫌悪感に鈍感なまま選挙に挑んだ結果、自民党は有権者の『投票行動の大きな振れ』に直面し、大敗を喫した。」とでもなるのでしょうか。

 10年前に指摘されていた「社会の変化」に対応できなかった自民党は、今度という今度は目を覚まして、有権者に支持される-時代の要請に応える-政策を立案し、意志決定を行い、リーダーシップを発揮する政党にならなければならないし、その為に微力を尽くしたいと、心より思います。


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コメント

     2世3世議員が、新人議員の越えられない壁を容易に越える。                                                   
 
自民党の体質的特徴の1つで、その負の違算?が、しがらみ(国の将来より地元優先の支持基盤や実力主義より派閥的年功序列)を生み、思い切った改革は、同志の、ひいては(議席数を減らせば)自分の命とりにもなる。                              
  
長年にわたって、鎧のように頑強に築かれた古い体質を打破し、もう一度支持され期待される政党に生まれ変わる、またとないチャンスと捉えて、微力と言わず、自分なりの自分だからこそできるアプローチを、試みてくださいね。                                                                     

 P.S.        今日の台風で、農家の方など農作物に被害はなかったでしょうか。稲はほとんど刈り取られていましたね。幼い頃祖母に、農家の方が一生懸命作ったのだから、お米の一粒でも残さずきれいに食べなさい、と教えられたものです。今年も、安全で美味しい新米が食べられるのを、とても楽しみにしています。作り手の苦労に感謝しつつ。                     





 

  • Posted by 1004の月
  • at 2009/10/09 00:08:35

1行目、oがぬけてませんか?

  • Posted by まるひょー
  • at 2009/10/09 05:29:50

 米山先生、こんにちは。
 私は、自民党の存在意義から問われなければならないと思いました。米山先生を応援している私ですら、今は、民主党への期待感が大きくなっています。
 ダムの見直しにしても、一度失われたら取り返しのつかない自然の大切なものを民主党が守ろうとしています。本来ならば、自民党が大切にしているもので、それこそ自民党にやってもらいたかったことなのに…。族議員が利権や官僚と結びついてできなかったことに、今、民主党が挑もうとしています。ちょっと青くさい学生とか、正義感の強い若者みたいです。でも、このまま自民党に任せておいたら日本人の心が行き詰ってしまう…。
 民主党は、全く違うやり方で日本を守ろうとしているように思います。
 いったい「自民党」ってなんですか?

  • Posted by キャサリン
  • at 2009/10/10 15:14:26

1984年ジュリスト総合特集「日本の政党」内のG.カーティス氏の論文より。
「日本の一党支配は最終段階に入った。
これらをもたらしたのは諸野党の中でも政策上の対立を放棄し政府との協調を選択した党で、しかもそうした党が日本の政治の方向を左右するキャスティングボートを握りつつある。
一党支配の終焉は保守支配の強化を意味している。(中略)
保守支配のもとで連立政権が成立するならば,コンセンサス(合意)とコンフリクト(競争)の均衡に関わる問題を新たな形で日本に突きつける。
近代民主主義は合意と競争のバランスの上に成り立っている。コンセンサスが無ければ政治的安定は不可能であり、競争が無ければ民主主義は無意味である。(中略)
日本は『和』とか『合意』を重視する価値体系があるが故にコンセンサスを強調する事は逆に開かれた政治的競争を窒息させる危険を孕んでいる。」

過去&現在全ての連立政権のみならず、政党の存在価値を考えさせられます。
さて、政党自体が連立政権の民主を自民党は笑えないです。「和や合意が全て政権維持の為=政治家の仕事は自分が政治家であり続ける事」っていう姿勢がバレバレになっちゃった から…(笑)

だから…政党ではなく個人を信じたいのです。政党政治に疑問を抱いたからこそ、米山隆一さんを信じています。誰が何と云おうが「保守本流の良識」は貴方の中にこそ有る!

  • Posted by 長岡市民(ノリ)
  • at 2009/10/13 18:54:19

「キャサリン」さん、コメント有り難うございます。

耳の痛いご指摘ですね、否定できません。「故郷」「自然」私達が守らなければならない大切なものです。その昔、50年前には、自民党型の公共事業や産業政策は確かに「故郷」や「自然」を守るためのものでした。しかしその時と全く同じやり方を半世紀間続けた結果、自民党の政策は、まるで利権や利害関係を維持することが主目的で、本当の目的二の次のようになってしまいました。そのことを私達は心から反省すべきだと思います。

「長岡市民(ノリ)」さん、コメント有り難うございます。

 こちらも耳の痛い指摘ですね。そもそも自民党自体が、その内部で、何を基本理念とするのか、掲げる政策はその理念と合致しているのか、それをどう実現するのかを、問い直さなければならないのだと思います。

 やるべきことは、数多く残されています。

  • Posted by 米山 隆一
  • at 2009/10/21 08:32:34

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