参議院議員選挙が終わった途端、東京都知事選挙が始まり、憲法改正、集団的自衛権行使容認の議論は、決着がついたような棚上げのような、中途半端な状態になっています。

 この時点で私はもう一度、集団的自衛権の行使の議論を整理したいと思います。世論調査に見る安保法案に対する意見は割れていますが、選挙結果は自民党の圧勝であり、集団的自衛権の行使についての国民の意見は率直に言って「混乱している。」のが本当のところであると思います。
 私はその原因は、「賛成派も反対派も、建前論を出して議論をしており、本音が伝わっていないから。」であると思います。

 まずもって私は日本近隣における「集団的自衛」(日本の防衛に必要な防衛を、多国間で協力して行う事。理念としての集団的自衛「権」とは微妙に異なります。)を否定する立場ではありませんし、かつての維新の党合憲案もそうではありません。また民進党の立場も、日本近隣における集団的自衛権の行使を「個別的自衛権」で説明できるとするもので、裏を返せば個別的自衛と言いうる集団的自衛を認めるものだといえます。
 つまり安保法案、集団的自衛「権」に反対する我々も、日本の防衛に必要な「集団的自衛」それ自体は認めているのです。実際問題現下の極東、東南アジアの状況において、多国間での防衛体制の構築は不可避であり、現実的に防衛を考えるものとして、「集団的自衛」は必須であることは否定しようがないと思います。
 にもかかわらず、時に「集団的自衛」そのものが悪いかのように言うのは、率直に言って聞く人の分かりやすさを優先してしまっているからであり、反省が必要であると思います。

 では、安保法案賛成、集団的自衛権容認の側は、日本の防衛に必要なことを提示しているだけであり、反対するのがおかしいのでしょうか(賛成派はそういう議論を展開しています。)?私はそれも違うと、思います。
 上記の通り、実は日本の防衛に必要な「集団的自衛」は、「集団的自衛権」を持ち出さなくても構築できます(日本の防衛に必要なのですから基本「個別的自衛権」の範囲で対処できるということです。)。
 にもかかわらず、「集団的自衛権」を持ち出すのは、じつはアメリカが使っているのと同じ文脈での集団的自衛権-すなわち自衛の名を借りた、外交戦略のオプションとしての軍事力の行使を認めたいからに外なりません。実際アメリカは集団的自衛権行使の名のもとに、アフガン戦争、イラク戦争、シリア空爆を行っています。勿論アメリカは、アフガンも、イラクも、シリアも侵略・占領したいのではなく、親米民主主義国家を樹立したいわけですから、これを「侵略戦争」というのも違うと思うのですが、テロとのかかわりはあるにせよ、これを「自衛のための戦争」というのもまた欺瞞でしょう。
 つまり現代の国際社会においては、①「自衛戦争」と②侵略戦争の間に③外交戦略戦争 とでもいえる戦争の類型が実際問題生じているのです。そして安保法制賛成派は、③の外交戦略戦争を①の自衛戦争だと言い張ったうえで反対派は①の自衛戦争すら否定するといって相手を非難し、安保法制反対派は③の外交戦略戦争を②の侵略戦争と言い張ったうえで賛成派は侵略戦争をやろうとしていると相手を非難しているために、安保法制を巡る議論は感情的になり、相互の理解が困難になっているのだと、私は思います。

 私は安保法制、集団的自衛権の行使の問題は、ずばり、③外交戦略戦争 に日本が参加するか否かの問題だと思います。関係各所からおしかりを受けるかもしれないのですが、私は、外交戦略戦争それ自体を、悪だとは思いません。戦争は可能な限り回避すべきですが、人間社会の現実として、時に避けがたいオプションではあるからです。
 一方で、それに日本が参加すべきかと言うと、私は参加すべきでないと思います。まずもって外交戦略戦争への参加は、国際紛争を解決する手段として、「自衛のために必須でない」、国権の発動たる戦争もしくは武力による威嚇又は武力の行使としか解し得ず、明らかに憲法に違反します。
 また、そういった法律論と対極の現実論において、戦後の国際社会において既に確立した各国の立ち位置というものがあります。外交戦略戦争を主体的に行う権限は率直に言って、米、英、仏、露、中の安全保障理事国の既得権として独占されているのであり、これらの各国も対立する利害を超えて、その既得権を手放す気は毛頭ないでしょう。つまり日本が外交戦略戦争に参加するということは、単にアメリカの外交戦略戦争のコストを分担するということで、日本の立場として得るものは極めて小さいと思われます。
 一方で日本には、自ら選んだものかどうかはまた別として、戦後国際社会の中で営々と築いてきた、「平和国家」「人道支援の国」という立ち位置があります。こちらはこちらで、実のところリスクも危険もある立ち位置ですが、しかし日本が自ら主体的に戦略を決め、かつそこから得るレピュテーションはまさに日本のものとして享受できるものです。私は日本がこれからもこの立ち位置を維持し続けることが、日本の外国戦略として最も利益のあるものだと思います。

 以上、私の安保法制反対論は、①自衛戦争は認め、②侵略戦争は絶対に否定したうえで、③外交戦略戦争は、アメリカ等がそれを行うことそれ自体は否定しないが、日本は憲法を理由にそこから距離を置き、「平和国家」「人道支援の国」という立ち位置をまもり、そこで努力することこそが、国益にかなうというものです。
 安倍内閣の立ち位置は、表面では②外交戦略戦争などしない!すべて①自衛戦争だ!ということですが、実のところ目指しているのは、②外交戦略戦争に新規参入し、米英仏露中と肩を並べる立場を得たいということでしょう。
 その立場が、国際社会の現実、日本の現在の国力に合致するものかいなか、本音の議論ができることを希望します。


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コメント

今回の新潟県のフェリー購入関する契約関係で米山さんの認識できている範囲で構わないので弁護士観点で解説していただけるチャンスがあればお願いします。

  • Posted by とおりすがり(元)
  • at 2016/09/01 17:18:06

こんばんは!
更新がないので書き込みします。
鳥越俊太郎
いい政治家になると思ったのですが…
スピーチがまずかったですね
自分を上手く伝えることができなかった。
一方で
小池百合子は、迫真のスピーチでした
共産党のきらさんも
二人に共通するのは政治に対する信念だと思います。
日本人も政治に対する感覚が鋭くなったように感じます。
次回の選挙
信念が有権者に伝われば必ず当選されることだと思います
テーマは
新自由主義ではなく、昭和30年代の日本ではないでしょうか?

  • Posted by たか
  • at 2016/09/03 20:48:18

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