ニュースの感想

二重国籍問題

  • 米山 隆一
  • at 2016/9/06 16:32:48

 民進党代表選挙で最有力と目されている蓮舫さんに、一部から「二重国籍問題」が持ちあがっています。

 http://www.sankei.com/politics/news/160905/plt1609050034-n1.html

 まず事実及び法律的なところ整理すると、蓮舫さんは1967年、台湾人の父と日本人の母の間に生まれました。この時点で日本の国籍法は父系主義をとっていますので、蓮舫さんは台湾国籍です。
 その後1984年に国籍法が改正され、父母両系で国籍を取得できることとなり、この法律改正以前に生まれた人も、届出によって自動的に国籍を取得できることになりました。この時点で蓮舫さんは、届出によって自動的に(従って何の問題もなく)、日本と台湾の二重国籍になったと思われます。
 国籍法14条は22歳に達するまでに国籍選択をすることを義務付けていますので、蓮舫さんは22歳までに(インタビューによると18歳で)国籍選択をしたと思われます。その手段には、外国国籍喪失届の提出と、国籍選択届の提出のどちらかを選ぶことになっています。前者を選んだ場合は二重国籍の問題は生じず、後者を選んだ場合は、国籍選択届はあくまで日本国内の手続きなので台湾における台湾国籍が残存し、二重国籍状態となります。このため国籍法16条1項は、「選択の宣誓をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。」と定め、国籍の離脱に努める努力義務を課しています(これが努力義務であることは、条文の文言から明らかです。)。

 さて、ここからは、上記事情に対する解釈、考え方の問題になりますが、事実関係が不明の部分を含めて複数の場合がありますので、場合分けをして解説させていただきます。
(1)蓮舫さんが外国国籍喪失届を提出することで、日本国籍を選択した場合
二重国籍の問題は生じません。
(2)蓮舫さんが国籍選択届を提出することで、日本国籍を選択した場合
①その後どこかの段階で、台湾において台湾国籍離脱の手続きをした場合
 二重国籍の問題は生じません。
②その後台湾において、台湾国籍離脱の手続きをしていない場合
 この場合、台湾から見ると蓮舫さんには台湾国籍が残っていますので、二重国籍状態になります。
 一方で、日本から見た場合、蓮舫さんの国籍選択手続きは国籍選択届を提出した時点で終了していますので、あくまで「他国籍を有しない日本人」という扱いになり、他の日本人-例えば私と、法的な取り扱いは全く変わりません。従って日本国内法的には、「二重国籍扱い」はありません(台湾が蓮舫さんを自国民と扱うかどうかは、日本国の施政権の及ぶ範囲ではないですので、日本国としてはあずかり知らないということになります。)。
 この状態は、一般論のところで述べた通り、日本法で完全に認められたものであり、違法では全くなく、この状態の日本人は実は相当多数いるものと思われます。

 さて、蓮舫さんが上の(1)、(2)①、(2)②のどの状態なのか私は全く知りませんが、いずれの状態であれ、それは全く違法ではなく、さらに同じ状態の日本人は極めて多数いることに間違いありません。
 上記産経新聞報道を含め、一部の方々は(2)②の可能性があることを指摘し、そこからなぜか「そのような状態のものは、日本に対する忠誠心が無いんだ!!!台湾へ執着しているんだ!!!問題だ!!!議員辞職すべきだ!!!」と結論付けています。
 (2)②の場合である可能性があることそれ自体は事実ですから、それを指摘するのはそれはそれでありと思いますが、(2)②の状態であるというその事実のみから、その人は日本に対する忠誠心が無く、議員としての資格がないから辞職しろなどというのは、明らかに暴論でしょう。繰り返しになりますが、(2)②の状態は法律上認められた完全に合法なもので、これに当てはまる日本人は多数います。この状態の人が国会議員になってはいけないという法律もありません。大体日本に対する忠誠心を持っているのか、台湾に対する執着心があるのかなどという事は、本人の心の問題であり、国籍離脱の手続きをしたかどうかというような外形的事象から分かるものではありません。このように、他人の内心の問題を、外形的事象に対する自分勝手な思い込みに基づいて断罪することこそ、差別の根源となる考え方で、このようなことを公言する方々の心根のあまりの貧しさに、私は慄然とします。

 話は少々それますが、私の昔の友人で、極めて日本人的な在日韓国人の方がいました。彼女は在日韓国人であることを公言していましたが、普段から「私日本の名前の方が可愛くて好きなのよ。韓国名ってあんまり使わないから誰の名前って感じ」とか、「勿論在日の友達もいっぱいいるけど、ちょっとひがんだ感じがあんまりなじめないの。」とかと言っていて、言動から在日韓国人を感じさせることはありませんでした。それで、ある日失礼とは思いながら「何で帰化しないの?」と聞いたことがあるのですが、それに対する返事は「あたしね、おばあちゃんっ子だったのよ。子供のころ両親が不仲で結構つらいことがあったんだけど、その時おばあちゃんが私を守ってくれてね。帰化しても全然いいんだけど、そうするとおばあちゃんが泣くだろうな、って思うとなかなか踏み切れないのよ。」と言うものでした。

 繰り返し私は蓮舫さんが、上の(1)、(2)①、(2)②のいずれの状態にあるのか知りません。しかしいずれの状態であるにせよ、それは合法だし、いずれの状態を選んだにせよ、そこには他人には分からない蓮舫さんの気持ちや事情があるのだと思います。そしてそれがどうあれ、蓮舫さんが今まで、日本のためにつくす気持ちで一心不乱に努力してこられ、これからも同じ気持ちで行動されることに、私はいささかの疑いも感じません。

 ただ一つ、民進党新潟県第5区総支部長として、そして一人の日本人としていえることがあるとすればそれは、「リーダーとは不自由なものだ。」ということです。私の立場でさえ、私の行動次第で、なかまの全員が、いわれのない非難を受けることがあります。その非難それ自体が合理的でなく、その非難に応じることが自らの信条や信念に反することがあるとしても、リーダーは、時にその理不尽な非難に毅然として対応し、そして時には、必ずしも本意でない選択をしなければならない時があります。それはリーダーとしての度量の一部であり、人はそれを注視しています。

 間もなく、新たな民進党のリーダーが決まります。そしてその新たなリーダーは、日本のリーダーを目指して、民進党の仲間や支持者、そして国民とともに、進むことになります。私は、そして我々は、度量を持ったリーダーのもと、懐の深い政治を実現していきたいと思っています。


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コメント

蓮舫さんは1997年のCREAと言う雑誌では
台湾籍選んだと発言してるわけですが・・・

ホームページ上では「帰化した」と書いてあって
恐らくその記述をみた産経の記者が「帰化したんですよね?」と質問したら、
「日本国籍の取得です(キリッ)」と答えてみたり

しかも雑誌の中では父親が大陸で育ったとおっしゃっていたり
どの発言が本当なのか、どの情報がどこまで正しいのかが
自分自身で「突っ込んでください」と言わんばかりのネタをばらまいてるんだから自業自得なんじゃないですね

  • Posted by マイケル・シェンカー
  • at 2016/09/07 01:15:43

マイケル・シェンカーさん,コメントありがとうございます。

CREAの記事は,切れ切れになったものが流布していますが,全体を読むと,「日本人として育ち日本語しか話せないのがコンプレックスだった。私の(ハーフの外国側の)国籍は台湾だが,大陸の中国を見たいと思った。」と言う文章と思われます。

法律上は帰化ではありませんが,一般用語としての帰化は広い意味で国籍取得を含んでおり,どちらでも大差ないと思われます。

蓮舫さんのお父さんの成育歴は知りましりませんが,当時国民党の台湾の有力者という事なら,そりゃ終戦後台湾に渡った本省人であり,子供のころ大陸で育った可能性はむしろ高いと思います。

  • Posted by 米山隆一
  • at 2016/09/07 08:26:06

米山 先生

時間は残り少ないですが、

新潟県の未来の為、立ち上がってください!!!

  • Posted by ririka papa
  • at 2016/09/07 10:25:42

一般社会では、30代で将来のリーダーが決まります。
誰もが、将来のリーダーを予感し長老たちも可愛がります。
それは、やはり自分の姿とダブる部分があるんだろうと思います。
変な書き込みになりますが、民進の候補者にそれを感じません。
5年後、10年後この候補者以外の方がリーダーに就いてると思います。

早く政界に進出してリーダーになるべく準備してください。

  • Posted by たか
  • at 2016/09/07 13:00:48

こんにちは。
今回の件、法律的に問題が無いなら騒ぐ理由がわかりませんね。二重国籍=悪 というイメージが先行して、誹謗?差別?のようにも感じられてきます。
政策とか主張をもっと理解できるような方向に話が進んで欲しいですし、報道して欲しいですね。

  • Posted by わかもの
  • at 2016/09/07 17:16:27

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