活動報告

憲法9条改正について

  • 米山 隆一
  • at 2007/5/17 07:06:59

 5月14日、国民投票法案が参議院で可決され、成立しました。私は改憲論者であり、憲法改正は国民の当然の権利だと思っています。手続が確立することで国民の権利が実体化したことは、先ずは素晴らしいことだと思います。この法律の成立をもって「憲法を性急に改正しようとするものだ」と非難する向きがありますが、そもそも改正は憲法96条に定められています。憲法を守るために、憲法に定めのある手続の不備を放置すると言うのは、いくらなんでも論理矛盾でしょう。

 憲法改正においては「新たな権利を導入する」「統治機構のあり方を再考する」「地方自治のあり方を再考する」等、「9条改正」以外にも多くの重要な問題があります。しかし何と言ってもこの「9条改正」問題が大きな注目を集めていますので、これに対する私の意見を述べたいと思います。

 私は先のブログに書いたとおり、9条1項の戦争の放棄は維持した上で、2項以下を改正して、

(1) 自衛の為の軍隊(自衛隊)の保持

(2) 内閣総理大臣による軍隊(自衛隊)の統制

(3) 集団的自衛権 

を明示すべきだと考えます。 

 これに対して9条改正に反対する「護憲派」の方々の論拠は、主として
 
 1.9条を改正すると、軍隊を持つようになる
 2.9条を改正すると、戦争をするようになる。
 3.9条を改正すると、集団的自衛権を行使するようになる。
 4.9条を改正すると、周辺国の疑いを招く。
 
 かと思います。私はそのいずれに対しても「それはその通りですが、1.-4.のすべてについて、9条を改正しなくても、全く同じことが言えます」と反論したいと思います。

 1.は明確です。自衛隊は、世界最新鋭のイージス艦を5隻保有し、現時点でF-15をおよそ200機保有し、近い将来にはこれまた世界最新鋭のF-22戦闘機を100機保有することになるといわれています。冷静に考えて、この戦力に立ち向かえる国はそう多くありません。9条がどうあろうが、日本はとうの昔に、世界有数の軍隊を保有していることは動かし難い事実です。

 2.についても同じでしょう。政府の9条解釈は鳩山(一郎)内閣以来「侵略戦争は放棄しているが自衛の戦争は可能である」で統一されています。現憲法のままでも他国から攻められたら自衛隊はほぼ間違いなく反撃するでしょう。逆もまたしかりで、現在の国際情勢においては、北朝鮮や中国のような、覇権志向を隠そうとしない国ですら、そうそう戦争など起こせるものではありません。日本が9条を改正して「日本は自衛的交戦権を有する」としてみたところで、それを理由に自ら戦争を起こすことは現実的に不可能でしょう。戦争が発生するかどうかはほとんど100%その時の国際政治と国内政治の状況によるのであって、憲法9条がどうだからどうなると言う性質のものではないように私には思えます。

 3.は多少微妙ではあります。9条が改正され、集団的自衛権が明文的に許容されれば、現在イラクの「非戦闘地域」にいる自衛隊が前線に送られる可能性は確かにあります。しかし、私は現在自衛隊がいる「サマワ」地区が「非戦闘地域」だとは正直思えません。又「後方任務=兵站」は軍事の重要な一部であり、後方だから集団的自衛にあたらないと言うのは、政府には申し訳ないのですが、正直屁理屈でしょう。9条のある状態で、とうの昔に集団的自衛権は行使されていると言うのが、現実ではないでしょうか。

 4.については多少皮肉になりますが、私は次の質問を投げかけたいと思います。「それはそうかもしれません。しかし、その疑いを投げかけている国々は、9条を守ってきた今の今まで一度でも『日本には9条があるから信頼できる、安心して良い』といってくれたことがありますか?」と。従軍慰安婦問題を見るまでも無く、「疑う国」は9条がどうあろうが、今まで過敏なほどに日本を「疑って」きました。これも結局のところ「疑われるかどうか」は国際政治の状況と、それに対する日本の政治のあり方で決まるのであるのであって、9条を守ったからどうだと言うことは無いということを、日本はそろそろ悟るべきだと、私は思います。

 このような事を書くと、「自ら既成事実的に憲法に反する状況を作っておいてそれを改憲の論拠にするとは何事だ」と怒られる方もおられるでしょう。それは論理的には正にその通りなのですが、この「既成事実」は実は既に何度も何度も選挙によって、国民が示してきた選択の結果なのだと言う事を、忘れてはいけません。自衛隊の存在は1954年の成立以来、一貫して政治の論点であり続けました。しかし、その存在を否定する社会党、共産党が選挙の結果過半数を占めたことは一度としてありません。自衛隊の海外派遣は比較的最近の話題ではありますが、1991年のペルシャ湾派遣以来既に15年が経過しています。その間国民は、一度として自衛隊の海外派兵を否定する民主党に過半数を与えていません。結局のところ国民は、現実の国際政治の中で、「自衛戦争の是認、軍隊の保有、集団的自衛権の行使-これによる政治経済の安定」と言う極めて現実的選択を何度と無くしてきているわけです。

 こういった観点から見ると、「中小の小島を占領される事を覚悟の上で、相手に攻められての自衛の為の戦争すら一切しない事を宣言して自衛隊を解散し、アメリカの激怒を買う事を承知の上で日米安保条約を破棄して、しかもその後どの国とも一切軍事同盟を結ばない」と言う国民の多くが望まないだろう政策の一大転換を為す覚悟があるのでもない限り、「護憲」は「国民の選択によって積み上げられた憲法と相反する既成事実には眼を瞑り、『憲法は守られている』と言う幻想を抱いていたい」という主張に過ぎないように私には思えます。例え9条がそのままであっても、今もこれからも、日本は莫大な費用を使って世界有数の軍隊を保有し、相手から攻められれば指揮命令系統もはっきりせぬまま反撃し、要請にしたがって立場も定かでないままアメリカの世界戦略に組み込まれ、あいも変わらず周辺国からは過剰ともいえる疑いを受け続けることでしょう。

 私はこのような現実から眼を背け続ける態度が、憲法前文に言う「国際社会で名誉ある地位」を占めることにつながるとはどうしても思えません。現実は理想どおりではありません。それならばその現実を認めた上であるべき理想を追求するのが、責任ある国家の取るべき態度でしょう。
 
 日本には軍隊がある。それを認めたうえで、軍事費の膨張には厳しい制限をかける。日本は侵略戦争は決してしないが、攻めてこられれば全力で反撃する、だからその時に軍部が暴走しないように、文民統制の仕組みをしっかり打ち立てる。日本はアメリカの集団的自衛体制の重要な一翼を担っている。だからこそアメリカに対して言うべき事は言い、行きすぎがあればストップをかける。周辺国は日本に常に過剰ともいえる疑いをかけてくる。だからこそそれを抑える政治上の対処をする。それが日本のとるべき道だと、私は思います。

 私は憲法改正が、日本が、「国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓い(憲法前文)」、現実を見据えた努力を積み重ねることで、「正義と平和を希求する国際社会において名誉ある地位を占める(憲法前文)」第一歩となる事を、強く願っています。


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コメント

改憲までの流れは国民の選択の結果だというが・・・
議会における改憲派と世論調査での改憲支持の国民の割合がかけ離れていることからわかるように、議会なんて民意を反映していないと思う。
政府の思惑通りになるように、マスコミに圧力かけたりして、都合の良い情報ばかり国民に示し、選挙結果をコントロールしているのでは?

  • Posted by ayane
  • at 2007/05/17 07:41:08

戦争許す憲法の代わりに

サービス残業許さない憲法が必要ではないか

  • Posted by TT
  • at 2007/05/18 16:00:27

憲法改正に反対するやからたちは、なぜか不思議なことに、絶対に北朝鮮による日本侵略・日本人拉致について触れない。

憲法9条を守れ、というヤカラよ!日本が侵略を受けたら、どうすればいいというのか聞かせろ!

まさかかつての左翼や日教組などみたいに、「日本を侵略する国はない!」「どこの国が日本を侵略すると言うんだ!」という類の事は言わないだろうね?

  • Posted by ,
  • at 2007/05/19 12:54:35

ayane さん、コメント有難う御座います。

 日本は代表制民主主義を取っていますので、確かに個別の問題について、完全に民意を反映しているわけではありません。ただ、「自衛隊の存否」「海外派兵の可否」と言うことに関しては、今迄概ね民意を反映した結果が出されてきたのではないかと思います。

 「議会と国民における改憲派の割合」については確かにかけ離れていますが、私はこれはこれでいいのだと思っています。もし「民意が全て」であるなら、あらゆる問題を直接投票で解決すれば良いと言うことになって、議員の存在は不要になります。国民の中で「改憲」を是とする意見がまだ成熟していない現在においても、議員が「提案」と言う形でそれをリードし、機が熟した段階で選挙を行って民意を問うのは、むしろ代表制民主主義のあるべき姿でしょう。

 憲法改正に関する私の意見はブログに書いたとおりです。今後多くの意見が出され、憲法に関する議論が盛り上がる事を期待します。

TTさん、コメント有難う御座います。

 憲法にするか法律にするかは兎も角、いい案ですね(笑)。私は「豊かな日本」を実現する為に、日本のちょっとクレージーな長時間労働は是非改善していくべきだと思います。たなざらしになっている労働関連法案について、再び議論を深めていく必要があると思います。

「.」さん、コメント有難う御座います。

 「攻められたら」と言うのは大変重要な議論だと思います。「専守防衛」とか「絶対的非暴力」を実行するのは、実のところ非常に大変な覚悟とコストが必要な上に、ほとんどの場合「攻撃のオプションがある状態」に比べて悪い結果しかえられないものと思われます。これを主張する人は、その高コストとパフォーマンスの悪さを正当化する論拠を明示すべきだと、私も思います。

  • Posted by 米山 隆一
  • at 2007/05/21 02:11:45

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