滋賀県知事選挙で、元民主党三日月氏が僅差で勝利しました。集団的自衛権の行使が影響したという声も聞きますが、私はそうではなく、相も変らぬ「国とのパイプ論」に終始した「与党の傲慢」が響いたものと考えています。

 いまさらですが、三日月、小鑓両候補の公約を比較すると、

小鑓氏の公約

・与党との太いパイプを作りアベノミクスの力で経済成長を促す
・法人税減税により滋賀の企業誘致を推進する
・保育施設の充実で女性を企業の労働力として活用できる制度を整える
・インフラ整備による大規模な公共事業で震災の対策を取るとともに経済を活性化させる
・幼児教育を推進し英語を第二言語として習得させ世界で活躍できる人材を作る
・原発のある福井県と連携して電力の安定供給を計り、国土強靭化を推進する
・新幹線を誘致し地域を活性化させ競争力のある滋賀県を作る

三日月氏の公約

・激務やサービス残業が慢性化している医療・介護・福祉・保育に関わる処遇の改善と人材の確保、ブラック企業の根絶
・文化・スポーツ政策において国民文化祭の誘致とプロスポーツイベントが可能な施設整備
・教育分野では、いじめ防止のための権力者による監視強化・管理教育よりも中高生のモニター制度、生徒会の権限強化など若者自身の意見が反映される仕組みを作る
・老朽化したトンネル等の整備と自転車道の充実、通学路の安全確保
・原発に依存しない電力の地産地消を目指し、家庭向け太陽光パネル設置の補助金制度の設立
・琵琶湖のマザーレイク21計画と内湖再生プロジェクトを推進し環境保護と再生によって観光地としての価値を高める
・県民参加の事業仕分けを実行

で、自民党小鑓氏の相も変らぬ「公共事業依存」、「国とのパイプ論」が鮮明です。官邸で安倍ノミクス策定を担っていた小鑓氏にしてこの主張なのですから、結局のところ自民党は、恰好はつけてみても国家主導の公共事業依存の成長モデルから、全く抜け出していないということでしょう。

 自民党の候補は、国政でも地方でも、選挙のたびに、ほとんど全員が「国とのパイプ」を連呼します。確かに、「現在の与党、現在の政治体制」において、たった今国から公共事業を取ってくることが、その時、その地方にとっては、プラスであることは否定できません。
 しかしそもそも公共事業は、短期的に有効需要を作り出すために、短期的に誰にでも発注できる仕事であるうえ、基本的には民間が手を付けない―つまりは収益性の上がらない仕事です。必要なインフラ整備以上に公共事業に国のリソースをつぎ込んでも、日本の競争力が上がることはありませんし、誰にでも発注できる-さして希少性がなく、さして給与の高くない仕事をいくら積み上げても、若者が希望を持って地方で生きていく基盤にはなりません。
 にもかかわらず、日本全国すべての地方が、高度成長後ほとんど半世紀にもわたって、ひたすら国とパイプを結び、結んだパイプから吸い上げたリソースに依存していわば「その日暮らし」を続けてきた結果、国は未来への投資が出来なくなって競争力を失い、地方は建設労働以外の職を作ることが出来ずに若者が流出して消滅の危機に瀕しているのが、日本の現状だろうと私は思います。

 国は、安易なばら蒔きを止めて本当に必要なことに戦略的投資を行うべきですし、地方は、国がばら蒔いてくれる短期的な仕事に依存するのではなく、長期的に持続可能な経済・仕事を構築すべきです。そのために必要なのは、「パイプ」から流れ出る安易な、つかみ金的公共事業ではなく、自らの工夫、自らの責任で使うことができる、権限と財源でしょう。

 今回の選挙は、自民党の相も変らぬ公共事業依存による地方のコントロールが、何時までも継続できるものではないこと、ましてや長期的に見て地方の未来に資するものでもないことを、有権者に見抜かれた結果であると私は思っています。

 安倍政権は、今回の選挙結果を受けて、「地方創生」に注力するとのことで、今までのパターンからして、またも選挙前に日本全国に大量の公共事業がばらまかれ、市会議員も県会議員もこぞって「中央とのパイプ」を喧伝するのでしょう。
 しかし、故郷の未来を創るのは、国の公共事業ではなく、故郷に住む私たち自身です。
 地方は地方の力で地方の未来を創るべきであり、国のやるべきことは、あちらこちらで、財源も考えずに、国に従って公共事業をしていれば明日のご飯は食べられるよと囁き続けることではなく、自らの財源と権限を地方・民間に委譲し、それぞれの地方、それぞれの方々に自らの責任で自らの未来を創ってもらう仕組みを作ることでしょう。
 「古典的パイプ論」による国への依存から脱却した、地方自身の力による地方の復活を、私は希求したいと思います。
 
 


  • コメント (1)
  • トラックバック (0)
トラックバックURL :
http://www.election.ne.jp/tb.cgi/97443

コメント

まだホリエモンの意見がマシな気がします。例えは悪いですが。それ位時代は動いていてそのスピードに制度、政治家がついていけていないことが、政治と実生活の乖離になっているのでは?

主張に対する違和感、半端ない。

結局何もできない感じしか受けず投票の選択肢にも上がらないのが悲しいです。

  • Posted by わかもの
  • at 2014/07/25 23:45:29

エレログTOP | エレログとは | 運営会社 | 免責および著作権について | お知らせ

政治家ブログ”エレログ”地方議員版ができました。参加お申し込みはこちらから

政治家専門サイト ele-log 国政版 お申し込み 政治家専門サイト ele-log 地方版 お申し込み
国会議員、都道府県知事、市区町村長、都道府県議、市区町村議、および立候補予定者専用

Copyright by Promote committee of Online-Election.,2001-2007, all rights reserved.
ele-log and the ele-log logo are registered trademarks of
Promote committee of Online-Election