ニュースの感想

袴田事件と三権分立と政権交代

  • 米山 隆一
  • at 2014/3/29 13:44:34

 言うまでもないほどニュースで取り上げられていますが、袴田さんの再審請求が認められ、48年振りに釈放されました。袴田さん、そして関係した方々に、私の立場で、心から「良かったですね。」と申し上げたいと思います。

 この袴田事件、法律を勉強したことがある人ならだれもが知っている有名事件で、かつ、少しでも資料を読んだことがある人なら、「これはおかしい。」と感じるものでした。拷問と言って差支えのない取り調べの実態が明らかになり、45通中44通の自白調書が排除されながらなぜか1通だけ認められた自白調書にすら記載されていない、決定的な物証(血の付いた衣類)が、本人が犯行を否認した後、逮捕後1年も経ってから、「味噌タンクの中から出てくる。」などと言うことは、普通に考えて奇妙としか言いようがなく、捜査機関の捏造の疑いは状況証拠的に真っ黒です。
 捜査機関の猛省を超えて、冤罪が発生した過程の徹底的な検証と、再発防止策の策定が必須であると思います。

 それを当然の前提として、何故このようなとんでもない事件が起こったのか、そして何故この状況で、静岡地検はなおも自らのねつ造を認めず、再審開始の取り消しを求める即時抗告を行う予定なのかを考えると、組織、なかんずく日本的組織の病理とそれに対する対処法が浮かび上がってきます。
 組織は、基本的には上意下達-上位者の指示に下位者が従うことで成立しています。それはそれで当然のことです。しかし、時に、殊に日本的組織では、「上位者に対する絶対服従」が美徳とされ、組織内で権力を握った人物が、不合理な決断をした時にまで、たとえそれが権力者の専横、保身、利益誘導に基づくものであっても、誰一人それに逆らわず、むしろそれに加担することが組織内での出世につながるという状況が出来上がります。宗教組織、ブラック企業、最近では研究機関や政党においてまで、傍から見たら馬鹿げた決断、馬鹿げた言い訳が、組織内においては強固に維持されている例が、散見されます。組織と言うのは、それほどに自らの方向性を改めるのが難しいものです。

 国家機関のレベルにおいて、この「組織の誤り」を正すための方策として発明されたのが、「三権分立」の原則であると言えます。袴田事件でも、検察組織、裁判所組織は、それぞれに過ちを犯し、それぞれが自分の組織の誤りを正すことは出来ませんでした。しかし、裁判所が、「第三者の目」でみたら、検察組織の過ちは明らかであり、その過ちを指摘し正させることは出来たから、今回の再審開始となったのでしょう。そしてこの裁判所の「第三者の目」を機能させたのは、「裁判員裁判」によって導入された「公判前証拠整理手続」と言う制度であり、いわば「国民の目」と言う更に高いところの「第三者の目」が、検察の誤りを正したのだと言えます。

 民主党の「決められない政治」の失態以来、「決められる政治」への国民の志向が非常に強くなっており、それが消費税増税、集団的自衛権、外交、安倍ノミクスと言った個々の政策への賛成が低いにもかかわらず安倍政権が高い支持率を維持している一つの理由となっていると思いますが、それは、日本が、国家として間違った方向を選択した時、誰もがそれに気づきながら、組織の力学によってそれを訂正できないまま破滅に進む大きなリスクを孕みます。

 国家の選択を、国民の「第三者の目」に晒し、時に応じて柔軟により良い方向に持っていけるように、政権交代を担える政党、そしてそれを担う力のある政治家となっていけるよう、頑張り続けたいと思います。


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