安倍総理が「成長戦略の柱」として、女性の活用を掲げ、「三年育児休暇を取れるように、経団連に要請しました!」と記者会見で誇らしげに胸を張られました。

 「働く女性が3年間育児休暇を取れるようにすること」それ自体に、反対の人はいないでしょう。しかし、「経団連」への「要請」が成長「戦略」であるというのには、大変失礼ではありますが、正直苦笑してしまいました。

 私ごときが「戦略論」を披歴するのはなんですが、Wikipediaをそのまま引っ張ってくると、「戦略(せんりゃく、英: Strategy)は、一般的には特定の目標を達成するために、長期的視野と複合思考で力や資源を総合的に運用する技術・科学である。」とされています。
 つまり「女性の力を活用して日本経済を成長させる」という大目標、「働く女性が三年間育児休暇を取れるようにする」という中目標を、「いったい、どうやって、どのくらいの時間で、どういうリソースを、どのように運用して実現するのか?」という道筋を立てるのが戦略なのであって、「女性が3年間育児休暇を取れるようにします!実現方法は各自が考えるように要望しました!」というのは、到底「戦略」の名に値しない、単なる願望にすぎないといえます。
 非常に辛口のコメントが許されるなら、これは、何ら実現方法を考えずに、普天間基地の移転先を「国外、最低でも県外!」と誇らしげに謳い上げられた鳩山元首相の在り方と、どこかだぶります(鳩山元首相のこの発言も、最初は喝采で迎えられました)。

 安倍首相は、企業の女性登用も勧めています。安倍首相の言うとおりに企業の女性登用が進み、3年間の育児休暇が実現すれば、その企業では重要なポストの人間が次々と3年間もの育児休暇を取ることになります。その時その企業の労務コストは増加し、競争力は却って低下しかねません。それはすなわち、女性登用のプラスを、女性登用のコストがキャンセルアウトしかねないことを意味します。
 また、仮に「経団連」の企業経営者が極めて戦略的に、女性の登用と、三年間の育児休暇と、企業競争力の向上という、相反しかねない3つの目標を実現できたとしても、それは日本の数パーセントの女性に恩恵をもたらすにすぎず、90%以上の女性は、置き去りにされたままとなります。それで日本全体の競争力が向上するとは、到底思えません。

 「長期の育児休暇の実現で女性の力を活用して日本経済を成長させる」ために必要なのは、どう考えても、実現可能な育児休暇の年限を法定し、財源を確保してその実現が困難な中小企業には援助し、監査制度を整えて違反する企業を罰する総合的な政策を立案・実行することであって、「経団連に要請する」ことではないはずです。

 安倍総理、そして日本のリーダーには、受けの良い政策的「ゴール」をただ矢継ぎ早に打ち出した民主党政権の轍を踏むことなく、どうやってそのゴールにたどり着くのかその方法を考え、実現可能なプランを示し、たとえ困難でも、国民を叱咤激励してそれを実行していただきたいと、一国民として心より願います。


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