孤立の対価

  • 米山 隆一
  • at 2007/2/18 23:53:22

 先日までの行われていた6カ国協議において、北朝鮮が寧辺の核関連施設の停止、封印し、IAEAの監視を受けること条件として5万トンの重油を支援し、更に核関連施設を無力化した場合95万トンの重油を支援するとした共同文書が採択されました。日本も当然この共同文書に同意していますが、拉致問題が進展するまで見返りのエネルギー支援には参加しないことを表明しています。

 これに関して、与野党の一部から、「日本が孤立化し、発言力を失う」として核問題と拉致問題を分離して支援に参加すべきとの意見が出ていますが、私はこの意見には、明確に反対で、政府はあくまで現在の立場を貫くべきだと考えます。

 その理由の第一が、「拉致問題は日本として絶対に妥協してはならない問題であり、これを棚上げしてのいかなる援助もありえない」のは勿論です。

 しかしそれと同時に、「孤立するかもしれないが、そもそも孤立がもたらすものは不利益ばかりではない」と言うのが、私が考えるもう一つの理由です。

 この六カ国協議でもっとも発言力がある国が、当事者である北朝鮮自身である事は、恐らく異論のないところでしょうが、この北朝鮮は、六カ国はおろか世界中から孤立しています。北朝鮮に次いで発言力を有すると思しき米国、中国も、世界と協調することと孤立することのどちらが多いかと言ったら、正直後者のように思われます。勿論「同調者が多いこと」も発言力の源泉の一つには違いありませんが、「何をしでかすか分からないこと」「ともかく力が強いこと」「人の言うことなど気にも留めないこと」も現に発言力の源泉になっているわけで、「発言力の源泉は多様である」と言うのが現実でしょう。

 今回の代価支援の結果各国が得られるものは「個別の利権」ではなく、「核の脅威からの安全」と言う「共同の利益」です。払おうが払うまいが、孤立しようがしまいが得られるものは変わりません。払った分だけ余計にもらえるのでない限り、出来るだけ多くの国を引き込んで支払額を減らしたいと思うのが人情と言うもので、このような場合には実は、最初に支払いを表明した国が「お前は言ったとおりに払えよ」と言う形で最初に発言力を失い、最後まで支払いを拒み続けた国が、言葉は悪いのですが最後まで条件闘争を展開する「ごね得的」発言力を保持すると言う事態が生じる可能性のほうが、遥かに高いように思われます(現に5万トンの支援は韓国一国で負担することになっており、正にこの事態が発生しています)。

 結局のところ「孤立」が時に「発言権の喪失」という「代償」をもたらす場合があるのは確かだけれど、状況次第では「孤立」がかえって、その国の希少価値を高めて「発言権の向上」と言う「対価」をもたらすこともありうるというのが国際政治の現実だと思います。そうであれば両者の可能性を冷静に判断して国にとって最善の選択をするのが、国益を預かる政府の使命であると、私は思います。他国から孤立した途端に発言力がなくなる」と考えてこれを避けようとするのは、日本独特の「孤立恐怖症」に基づく一種の逃避に過ぎないように思えます。

 日本政府が、現在の原則を貫きつつ、状況に応じた対応で最大の国益を得ることを期待します。


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コメント

日本は、スジを通し、[勇気ある孤立]をするべきです! 自国民を遺棄した友好・平和が、何の意味がありましょうか! どうせまた自国民を売りとばした菅氏ら民主党が、因縁をつけてくるでしょうが、政府自民党・そして米山さんには、日本が孤立しても、是非スジを通してほしいです!

  • Posted by 、
  • at 2007/02/19 01:20:03

大英帝国もアメリカ合衆国もかつては孤立主義をとってました。 まあその後改められましたが、10年〜の長期スパンで続けるのは無理があるとしても、1〜5年ぐらいの短〜中期ぐらいの孤立主義は外交の一手段として現在も有効だろうと思っています。 軍事は外交の一手段です。 その軍事を無視して外交を行うことは外交の基本を無視した行為に他なりません。 いつの時代になっても物事の原理原則というものは変わらず根底にあり続けるものです。 もちろん軍事力を行使せよ、と言ってるのでは無く、行使する覚悟を内外に示すことが大事なのだと思います。 米山さんの今現在の政治的情勢においては不利になりかねないことを、このように公に配信する勇気に敬意を表します。

  • Posted by じん
  • at 2007/02/19 23:02:41

「.」さん、じんさん、コメント有難う御座います。  ブログにも書きましたが、私は「孤立」も「論争」も恐れることの無く時に採用すべき外交の一手段だと思っています。勿論それらを使うときには、善後策の用意と、周到な計算と、計画をやりぬく度量が必要ですが、それらを駆使することこそが、「外交」と言うものでしょう。「何時でも何処でも常に全ての国と友好状態にある」事が理想であることは間違いありませんが、それのみに縛られていては、現実の国際政治の舞台で「国益」を守ることは不可能だと、私思います。

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