ニュースの感想

連立と辞任と解散と

  • 米山 隆一
  • at 2007/11/05 02:05:04

 福田総裁と小沢党首の会談で「大連立構想」が打ち出され、「いったいこれは政治的にこれからどういう意味を持ってくるだろう」と考えていたら、その考えがまとまる前に昨日、小沢党首が辞任を表明してしまいました。今の政界は、まごまごしていると昨日の状況が何の意味も持たなくなる、文字通り「一寸先は闇」の状態だと言えます。

 「大連立構想」とそれに対する小沢氏の対応は、率直に言って、多くの方々から「真意を測りかねる奇策」と受け取られていると、思います。「大連立」は小沢氏自身が標榜してきたはずの「2大政党制」の建前からは邪道そのものである上に、政策のすりあわせや衆参双方の選挙における候補者調整等、あまりに超えるべきハードルが大きいのですから、当然と言えば当然でしょう。しかし、既に各所で指摘されていますが、現在の「衆参のねじれ」を前提とすると、この「邪道」ともいえる「大連立」は、実はある種「避けがたい必然」と考えられなくもありません。

 次の衆議院の解散・総選挙は、どんなに遅くても2年後には来ます。それに対して参議院の選挙は、3年後に半数、6年後にもう半数が改選されるにとどまります。勿論、次の衆議院の解散・総選挙で民主党が過半数を制すれば勿論この「ねじれ」は解消します。しかし、油断するわけではありませんが、候補者の擁立状況や地方組織の状況を考えると、そのような「民主党大勝」の可能性は実際あまり高くなくて、「自公が現有議席を減らし、2/3は割り込むものの過半数は維持する」方が遥かに現実味があると思われます(もちろん再び自公が2/3以上の議席を獲得すると言う可能性もありますが、こちらもやはりそれほど可能性は高くないでしょう)。

 すると次の衆議院選挙以降は、国会は、「衆議院は自公、参議院は野党が過半数を占め、しかもどちらも再議決に必要な衆議院の2/3を持たない」状態になるものと思われます。これは、「与野党で意見が対立する法案は、何一つ成立させることが出来ない」ことであり、国家の意思決定が深刻な機能不全に陥ることを意味します。この状況は、最短なら3年後の参議院議員選挙で自公が勝てば解消しますが、その為には自公で改選121議席中76議席を獲得する圧勝が必要です。流石にこれは非現実的で、3年後と6年後の両方の参議院で自公が勝たない限り、「ねじれ」は解消しないと考えるのが自然でしょう。

 以上を前提として考えると、遅くても2年後、早ければ今すぐに、日本は最短で1年、最長で6年の「衆議院で2/3を持つもののないねじれ」を経験することになります。「この期間を国家として一切意思決定できずに過ごす」と言う最悪の事態を避け、国政を滞りなく運営するためには、与野党間で「何らかの協力関係」を築く以外の方策は恐らくありません。今回の「連立構想」が、福田・小沢両党首が、「『何らかの協力関係』の構築が困難なのは百も承知だが、どうせ困難ならにっちもさっちも行かなくなってからよりも、時間のある今のうちにやっておこう」と考えた結果だとしたら、それはあながち不可解な奇策ではなくて、「国家を憂うるが故の窮余の策」だったと言えるのかもしれません。

 そしてもしそうであるなら、「辞任表明後」の小沢氏の次の一手が、「党を割って、自民へ合流することによって衆参両院で多数を占める(連立)与党を形成すること」である可能性を否定できなくなります。その時には、私にとってはあまり嬉しいことではありませんが、田中真紀子さんが自民党に合流・復帰する可能性すらありますし、解散はおそらくは任期満了ぎりぎりまで先延ばしされることになるでしょう。

 冒頭で述べた通り現在の政界は「一寸先は闇」なので、これから何が起こるのかをこれ以上あれこれと予測するのはほとんど無意味でしょう。私に出来ることは、「どのような状況になっても、自ら信念をかけて闘う」覚悟と準備を進めておくことだけだと思います。これからの政局を注視すると伴に、体制の確立に全力を尽くしていくつもりです。

(尚、以上の「政界」の話とはそれとして、今回の「ねじれ」で明らかになったのは、日本憲法に定める「衆参両院の2院制」には制度設計上の不備があり、2大政党制への移行期である現在にはうまく機能しないと言うことだと、私は考えています。より時代に即した現時的制度にするために、憲法改正も視野に入れた検討が必要だと、思います)。


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