ニュースの感想

 道路特定財源の暫定税率の期限切れがいよいよ視野に入ってきました。ほぼ間違いなく、4月からガソリンの値段は25円下がるでしょう。自民党はおそらくは再議決するでしょうが、値上げに対する批判の矛先が自らに向けられることを恐れ、もしかしたら、あきらめるかもしれません。また、そのような意思決定を一切せずに、ただじりじりと、与野党にらみ合いのまま時だけが過ぎ去っていくのかもしれません。

 先の記事でも書きましたが、私自身、現在の道路特定財源の仕組みがこのままで良いとは思いません。国土交通省への権限の集中は既得権益と無駄遣いの温床となっていることを否定できません。地方財源が不足なのは間違いないのですが、それを埋める貴重な財源を最優先で「道路」だけに使う合理的理由を見出すのは、率直に言って困難です。

 しかし、です。たった今暫定税率をストップすれば、国・地方の財政に2兆6千億円の穴が開きます。もちろんそれ自体大問題ですが、それと同時にこれは、国債・地方債で手当てされない限り国・地方の財政規模が突然2兆6千億円縮小することを意味します(国債・地方債で手当てするなら、それはそのまま、国と地方の借金を増加させます)。公共事業の乗数効果を1.2とすると(消費の連鎖作用で財政出動の効果が拡大すること)、マクロ経済的にこれは、GDPを3兆円、およそ0.6%押し下げる効果を持ちます。これはGDP全体に対してそれ程大きな比率ではありませんが、景気が踊り場に入り、世界的にサブプライムローン問題が底なし沼の様相を呈している現状では、大不況の引き金を引く現実的危険を有します。実際わが地元の新潟県では、県発注の道路工事の一部がストップしています。1ヵ月ならまだしも、この状態が2ヶ月、3ヵ月と続けば、資金繰りに支障を来たし、整理が必要となる業者が出てくることは想像に難くありません。そしてその事態が更に長期化すれば、他業種にわたる連鎖倒産の危機が訪れる事も否定できません。

 これらの事態を「政治が変わるのに必要なコスト」と言ってしまえばそれまでです。しかし、それには、「大不況」がはじまっても尚、「これは必要なコスト」と言い続ける覚悟が必要です。「不況」が始まった途端に「財政出動による景気刺激策を!」となるのなら、いったん始まった不況を元に戻すためには必要な資金は、削減された2兆6千億円の数倍になるでしょう。「暫定税率の廃止」が結果として「景気対策のためだけの公共事業の増加」をもたらすことになったら、それこそこの混乱は一体なんの為だったのかということになってしまいます。

 繰り返しになりますが、特定財源の仕組みに問題が多いことは間違いありません。しかし、現時点でこれを突然止めることは、「歳入欠陥」「道路事業の停止」等の確実に予想される事態以上の悪影響ー平成大不況ーを、われわれの生活にもたらす現実的危険を有します。「一定期間後の一般財源化を含めた特定財源制度の見直し」と言う、おそらくは双方が歩み寄れる思われる妥協案は既に提示されています。「大不況」や「大混乱」を招来しない為に、与野党は、真剣に議論して合意点を探すべき義務があると、私は思います。


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>マクロ経済的にこれは、GDPを3兆円、およそ0.6%押し下げる効果を持ちます

確かにそうなのですが、ガソリンが値下がりすれば2兆6千億円減税になります。
よってGDPは理論的には0.15%しか下がらないはずです。(この点は自民党よりのマスコミに無視されていますが・・・)
 この程度なら建築基準法や貸金業法改正などの自民党政権の愚策の方がよほどGDPを押し下げ、政策不況をもたらしていると思われます。
 特に建築基準法は道路財源をこれだけ突っ込んでまで守りたいはずの業界に大打撃を与えており、理解不能です。

 個人的には日本の道路建設の乗数効果がほんとに1.2あるのか(もっというならほんとに1あるのか)は極めて疑わしいと思っています。
道路と聞くと都市部の有権者が嫌悪感を示すのは直感的に道路建設の乗数効果を疑問視しており、そんな金があるなら医療や年金に回して欲しいと感じているからではないでしょうか??
日本経済全体のためにもそのほうがいいと思われます。
 しかしよりbetterなのは、福祉歳出を増大させつつ全額国債を財源に必要な道路を作ることと思われます。こうすれば国民も道路関連議員も業界もみんなハッピーと思いますが・・・。
 私にはなぜ円高とデフレが問題なのに、国債を増発して日銀が引き受けていけないのか、なぜ国債残高を純債務ではなくグロスで評価しなければならないのか、さっぱり理解できません。
 自民党の良心的な政治家が財務省の根拠の乏しいプロパガンダを盲信して、国を救うためと私心を捨てて不況や福祉の劣化をもたらしている構図は何とかならないのでしょうか・・??


  • Posted by 放科の後輩(会員番号548)
  • at 2008/05/03 02:23:24

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