テニスと柔道と日本の心

  • 米山 隆一
  • at 2006/12/12 21:14:02

 私はテニスが好きです。実は私は運動神経が鈍いのですが、大学に入ったときに「一つぐらい人並みに出来るスポーツを作ろう」として始めたのが、一生の趣味になりました。

 「テニス」と言うと多くの方がいわずと知れた「ジェントルマンのスポーツ」と思われると思うのですが、日本のテニス、なかんずく大学体育会でのテニスは相当程度に日本風のアレンジがなされています。

 その中身は、コート上での立ち居振る舞いの作法に始まって、相手や審判への敬意、基礎的な反復練習の重視、精神論の尊重等々に至っており、結果として、まさに「テニス道」と言う名にふさわしいものになっています。

 私はこの「テニス道」を愛していて、妙齢の女性とテニスをするときでも、紅毛碧眼の青年とテニスをするときでも、厳格にその作法を守っています。実のところこの「日本テニス道」は国際的な評価も高くて、大体私は何処でテニスをしても「礼儀正しいナイスガイ」と評価されてテニス仲間に困りません(スポーツをする仲間と言うのは、別段作法がどうであれそんなものかもしれませんが・・・笑)。日本人の「礼儀正しさ」や「他人を尊重する態度」は実際私達が思う以上に他国の人も評価する美点なのであって、是非誇りを持って保っていくべきことだと思います。

 そんな素晴らしい「テニス道」なのですが、ちょっとした欠点もあります。日本人同士でテニスをすると、お互いの優劣をつけることを嫌ってかなかなか「シングルス(一対一の試合)」をしません。これが海外の方が相手だと、初対面で10分も練習すれば「さあ試合をしよう」になります。相手が勝てばそれで終わりなのですが、負かしてしまおうものなら、ほぼ必ず「もう一試合」になります。2連敗した後に3戦目を望むかどうかは流石に半々になりますが、対戦成績が1対1になったら相当な確率で3戦目に突入します。そういう訳で、海外の方と初対面でテニスをしたら、3試合は覚悟しておく必要があります(勿論その人の人となりと、お互いのレベルによりますが)。僕のように「楽しむ」ことが目的であれば試合の多寡はたいした問題ではないのですが、例えばジュニアの選手が「強く」なろうと思ったら、それまでの人生で1000回試合をしたことがあるか、100回しかしたことがないかは、如実に効いてくるでしょう。

 又、ここ数年テニスは、道具の進歩によって、求められる技術が一変しました。かつてはサーブ、ボレー、フォア、バックとオールラウンドにこなせることが強くなるためには必要だったのですが、道具の進化でサーブとフォアが余りに強力になった為に、極論すればもの「すごいサーブとフォアさえあれば、あとは何とかなる」時代になりました。この新しい流れは従来のスタンダードから見て「破格」だったために、「確立した型」の反復訓練を重視する日本テニスが、強烈なサーブとフォアを持ったジュニア選手の育成に乗り遅れてしまった面は、否めないように思います(あくまで素人判断ですが)。
 私の目には、「日本テニス道」は大変素晴らしいけれど、「他人と優劣がつくことを恐れず、実戦経験をつむ積極性」と「従来の型から外れていても、有用なものは取り入れる幅広さ」にかけているように思えます。

 さて、ではこの「日本テニス道」の欠点は日本人の本来的な欠点でしょうか?極めて個人的経験からの帰結で恐縮ですが、私はそうは思いません。私は子供の頃、柔道を習っていました。その柔道で、最初の30分は型の練習にあてられていましたが、それが終わると、「乱取り」と言う実戦が行われ、積極的に対戦を繰り返すことが求められました。又例によって運動神経が鈍かったので、私の柔道は「投げ技」をほとんど行わず、「返し技」と「寝技」を主体としたそれなりに「破格」なものだったのですが、師範の先生方はそれを寛容に認めて、取り立てて直そうとはしませんでした。勿論「子供だったから」と言うのも大きいと思うのですが、基本的には「勝てる戦法」に対して柔軟だったのだと思います。私は「五輪書」よりは「バガボンド」で宮本武蔵を学んだ口なのですが、彼の人生はそれこそ「実戦重視」と「何でもあり戦法」のオンパレードです。「戦って生き残る」事を最優先にする武道の世界では、それはむしろ当然の事だったのかもしれません。

 こうしてみると、新参武道である「日本テニス道」よりも、最古参の武道である「柔道」の方が現代的視点からはよりグローバルと言うか、アメリカ的である事は、なかなかに興味深いことだと思います。
 最近あちこちで「日本の心」が「アメリカ流グローバルスタンダード」に対峙するものとして取り上げられています。しかし何が「日本の心」なのかは、「日本テニス道」と「柔道」の比較をあげるまでもなく、明らかではありません。それ以前に、そもそもそれらが相対立するものなのかどうかすら、分明ではありません。

 私は、「日本の心」は決して固定したものではなく、時と場合によって、よりふさわしいものに変わっていくべきものだと思っています。「礼儀正しさ」や「周囲の人への敬意」といった良い点は是非とも守っていくべきでしょうし、仮に「勝負への貪欲さ」や「戦法の幅広さ」がかけているなら、アメリカからだろうが、宮本武蔵からだろうが、素直に学んで取り入れるべきでしょう。私は、この「良いものは何であれ素直に良いと認めて取り入れる謙虚さと柔軟さ」こそが、そもそも日本人が古来から有していた「日本の心」の核心であり、これからの日本に何より必要なことであると、思っています。


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こんにちは。 大学の体育会に所属されていたくらいですから、「人並み」どころか、きっととてもお上手なのだと思います。 やはりテニスをなさるのは専ら新潟ででしょうか?

  • Posted by ゆきお
  • at 2007/01/06 21:46:26

ゆきおさん、コメント有難う御座います。  テニスの腕は・・・そうですね、全くやっていない人から見たら、流石にテニス暦も長いですし「上手」なのだと思います。ただ、「大学体育会」と言うくくりなら、間違いなく下手な方でしょう。もしテニスをやられるようでしたら、是非御連絡下さい。直接対決してみましょう。私はブログに書いたとおり、結構すぐにシングルスを挑むので、割りと簡単に腕を確かめることが出来ます(但し1セットで負けたら先ず間違いなくもう1セットを挑みますので覚悟しておいてください−笑)。  テニスは最近は大分御無沙汰なのですが、やるときはほとんど新潟です。出席率は大変低いのですが魚沼市のテニスサークル「オレンジテニスクラブ」に参加していて、現在ここがほぼ唯一コンスタントに打てる場所になっています。因みに魚沼市では雪にプラスしてインドアコートが不足しており、冬はなんと地元の「体育館」を借りてインドアテニスをしています。ボールがものすごくすべるこのコート(?)もしかしたら良く練習するとウィンブルドンの芝コートに強くなれるのかもしれません。  尚本日は、長岡のインドアコートで、水澤電気の皆さんと早朝テニスを行い、大変さわやかに一日を始めることができました。有難う御座います。今後五区全土にテニスのテリトリーを広げたいと思っていますので、「仲間に入れてやろう」と思われる方がおられましたら、是非声をかけてください。

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