議会関係

不同意性交等罪法務委員会答弁原稿

  • 米山 隆一
  • at 2023/5/17 20:01:06

  5月17日、不同意性交等罪について法務委員会で質問を行いました。その質問原稿がこちらです。私はいつもこういった原稿をそのまま通告しています。不意打ちになど何の意味もなく、きちんと調整して出された答弁を頂いた上で、納得いかない所はその場で更問いすればいいからです。尚今回は、私は斉藤法務大臣他から意味ある答弁を頂けたと思います。関心のある方は是非衆議院オンラインなどをご覧下さい。議事録が出ましたら、解説記事などを書こうと思います。お楽しみに!

1. 不同意性交罪について、お尋ねいたします。ご承知のように不同意性交罪は「1号から8号までに掲げる行為又は事由その他これに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にある事に乗じて、わいせつな行為をしたものは、婚姻関係の有無に関わらず、6月以上10年以下の拘禁刑に処すものとする」と定められております。そして1号から8号として、3号アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること4号睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること、などが定められております。

(1)    先ずこの条文の「同意しない意思」というものの意味と言うか位置づけが問題になります。と言うのは、この日本語は非常に分かりづらいです。「同意する意思」と言うのは、勿論わかります。「不同意の意思(intent to disagree)」と言う事であれば、それは「不同意だ」という意思なのでこれも分かります。しかし「同意しない意思」と言うのは、率直に分かりづらいく、恐らくなのですが、1号から8号の原因で、「同意する意思を形成する事を余儀なくされる/誘導される」状態を含んでいると思いますが、宜しいでしょうか?確認的に伺います。

(2)   その上で、今度は「同意しない意思」には単に「不同意の意思」だけではなく「積極的に『同意しない』という意思」までも含むようにも見えます。
 ちょっとわかりづらいかもしれませんが、例えば、静かなバーで一人で飲んでいたら、悪い人ではないけれどちょっと苦手な上司が「相席いい?」と言って「え、ええ」と言った所そこに座って、やれやれと思ったら矢鱈話しかけててきているような状況で、「積極的に相席することに同意しているわけではないが、そこに相席するなと言う事ではない」と言う状況で積極的に「同意しない」とは表明しない、若しくはその表明が困難な状態はあるんだと思います。
 その時後から、「不同意ではないが、積極的な同意まではしない意思(not to agree)を表明することは困難だった!」とか言われたら、その相席した人は、「同意しているのかいないのかどっちなんだ!」となってしまいます。
 この条文の「同意しない意思」は「不同意の意思(intent to disagree)」なのか、「不同意ではないが、「積極的に『同意しない』という意思」を含むのか、お答えください。

(3)    そうであるとすると、文言として、「不同意の意思を形成する事」等とするか、令和4年1114日の法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会の第10回会議の私案(https://www.moj.go.jp/content/001382454.pdf)にある様に「人を拒絶困難(拒絶の意思を形成し、表明し又は実現することが困難な状態をいう)にさせ」と言うとした方が明確なのではないでしょうか?犯罪名も「不同意性交罪」な事ですし、直截に「不同意の意思を形成する事」等とする方がずっと分かりやすいと思うのですが、如何でしょうか?(法務大臣)

(4)    文言は兎も角、内容として「不同意の意思」だとして、例えば本当は家に帰りたいけれどまあそれ程苦手ではない先輩議員に二次会に誘われた時など、「行きたい訳ではないけど、凄く嫌と言う程でもない」状態で、特にアルコールも入っていてあれこれ考えるのも面倒だから「不同意の意思」は形成しづらく、まあお付き合いする、と言う事は現実生活では結構ある訳です。
 ここで、性交渉の事を言うと「それはお前の事だろう」と言われるので非常に言いづらいのですが、性交渉というのはものすごく幅が広くて、それこそ16歳のロミオと14歳のジュリエットが初めて一夜を共にしたときはきっとロミオは、「ロミオ様、貴方は何故ロミオなの?」と言うジュリエットに指一本触れるにも「触っていい?」と問い、ジュリエットも静かにうなずいて合意したと思うのですが、仮にロミオとジュリエットが一命をとりとめて死亡せず無事結婚して30年経ち、46歳になって、ちょっとお腹が出て髪の毛が薄くなった中年のロミオが、まあワインを飲んでいい気分になって「ちょっとロミオ、あんた何でロミオなのよ」とか言っている44歳のジュリエットを、なんとなくなくな感じでベッドに誘い、ジュリエットの方は正直酔いが回って眠くて積極的に「同意(agree)」って事でもないんだけれど、正直いつもの事だし、考えるのも面倒で「不同意(disagree)」の意思も形成しづらいから、まあおつきあいしたってことも、実際問題ある訳です。
 でこういう状況、つまり普通に自宅でお酒を飲んで、まあちょっといい気分で、日常の事でもあり、別に積極的に同意な訳でもないけれど、「不同意とも言いづらい」と言う状況も、条文上は「アルコールの影響で、同意しない意思を形成/表明/全うすることが困難」であるという事になり得ると思うのですが、これは不同意性交罪に該当しますか?

(5)    何故該当しないのですか?それはこの条文のどの文言をどのように解釈することから導かれますか?

(6)    そうだとすると、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが『著しく』困難」とした方が良くありませんか?単に「困難」だと、日常的な困難さというか、それほどでもない困難さと、ある程度、強度の強い困難さを区別できないと思うのですが、如何ですか?(法務大臣)

(7)    文言は兎も角、内容は「不同意の意思」を形成/表明/全うすることが「著しく困難」であるとして、これは基本的には内心の事かと思います。
 ①「暴行・脅迫」の様に手段として外形的かつ非日常的で、これがあればそれはそれだけで通常「不同意の意思」を形成/表明/全うすることが「著しく困難」であると考えられるものは、内心に踏み込まなくても判断が可能です。
 ところが、③アルコールになると、分かると言えばわかるのですが、例えばビール350ml缶一缶とかで、「不同意の意思」を形成/表明/全うすることが「著しく困難」になっているのかどうかは、個人のアルコール耐性との兼ね合いもあって、正直曖昧です。
 ④睡眠その他意識の明瞭でない状態になると、夜11時位でちょっと眠い時は「困難」と言えるのか、朝の2時ならどうか?いやこの人は夜型だから大丈夫だとか、正直その人が「不同意の意思」を形成/表明/全うすることが「著しく困難」であるかどうかは外からは分からない訳です。
 刑事裁判の原則として、検察官が構成要件該当性を「合理的な疑問を残さない程度」に立証しなければならないのですが、例えば睡眠―眠気によって「不同意の意思」を形成/表明/全うすることが「著しく困難」である事を、どうやったら「合理的な疑問を残さない程度」に立証できるのでしょうか?
 厳密に考えるなら、殆ど立証は不可能になってしまいますし、だからと言ってゆるくとらえたら何でも犯罪になってしまい、夜10時にワインを飲んだ後性交渉なんてとてもできない、性交渉は真昼間にシラフでやるしかないという事になりかねないのですが、その立証方法をご教示ください。

(8)    因みに不同意性交罪は親告罪ではありません。従って、検察が厳密に立証する、しないは兎も角として、単に一般の人から見た「疑い」だけで、第三者が告発し、警察は告発を受けたらそれを受理して捜査し、送検しなければならないという事で宜しいですか?

(9)    今ほど「刑事」と言いましたが、名誉毀損がそうである様に、刑事の規範と言うのは、民事の不法行為の規範をも規律し、この不同意性交罪が成立すると、刑事事件としての犯罪の成立とはまた別に、民事での損害賠償訴訟が起り得ます。
 この場合には、立証のハードルが刑事よりかなり緩やかですから、条文上は先ほど言った通り、夜10時にワインを飲んだ後性交渉をしたという事で、後から民事裁判になり、その時どういう状況で何をどう言ったかなんて言う物的証拠は双方ともにそれ程なく、尋問で強く言った方の主張が通ってしまうという事が大いに想定されますが、この様な事態について、ご所見を伺います(法務大臣)。

(10)  更に家事事件―特に離婚事件になりますと、もっと事情は混沌とします。かつて「女性は嘘をつく」という非常に問題のある発言をされた議員がおられましたが、離婚訴訟を行いますと、男とか女とかではなく、「論理的に考えて、どちらかは一方か、若しくは双方が嘘をついている以外にはありえない」と言う主張にまま遭遇します。J-POPの歌詞で「永遠を誓った二人が永遠にサヨナラ」と言うフレーズがありましたが、かつては愛し合った二人の美しい思い出が、憎しみに満ちた恐怖の思い出に変わる事は決して稀ではありません。先程の中年となったロミオとジュリエットも、16歳の時勘違いでうっかり死にそうなった事についてお互い罵り合って離婚することはありうるわけです。
 結婚記念日にレストランで美味しいシャンパンを飲んで素敵なホテルに泊まった事を、配偶者の一方が後になって「あの時はアルコールや眠気や経済的・社会的理由で合意しない意思を形成/表明/全うすることが困難だった。だから離婚だ!財産分与だ!損害賠償だ!刑事告訴だ!」と言い出したら、非常に混沌とした事態になります。
 そのような事態を避けるために、文言を、「不同意の意思」を形成/表明/全うすることが「著しく困難」等と分かりやすくすると共に、解釈の基準を明示すべきだと思いますが、ご所見を伺います(法務大臣)。
                        以 上


                            


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