和田参議院議員が「東京新聞・望月記者の質問は水準に達しているか?( http://blogos.com/article/240281/ )」というなかなか刺激的なタイトルの記事をアップされました。放っておけばいいのでしょうが,まあ刺激的で面白いですので,私は一丁このブログ記事の水準を評価させて頂こうと思います。

 因みに記者会見について私は質問を受ける側ですが,和田議員の古巣のNHKの記者さん含め少なからぬ記者さんから,「週刊誌や他のメディアの情報をもとに質問をしている」と思しき,和田議員に言わせると「レベルが低い」質問を受ける事は相応にあります。とはいえ,まあ記者会見における質問を私自身がやったことがあるわけではなく,この点については和田議員に一日の長があるわけですから,和田議員が自らの経験に基づいて望月記者の質問を評価されるなら,それはそれでいいのだろうと思います。

 ところで私の前職は,弁護士だったりします。弁護士というのは,一般の方々の感覚とは異なり,法廷で弁論をする仕事というよりは,文書で自らの主張を相手に伝える仕事であり(裁判の主張はほとんど文書でなされます。),自らの主張を相手にきちんと伝える文書を書く事については,私に一日の長があろうかと思います。という事で,弁護士視点から見て,和田議員のこのブログ記事が水準に達したものかどうか,誠に恐縮ながら勝手に評価させて頂こうと思います。

 弁護士の文書に限りませんが,ある事実に対する自らの評価を主張する文書(例えば望月記者の質問についての和田議員の評価を主張する和田議員のこのブログ記事がまさにこれに当たります)を書く際の定番の書き方は,①規範の鼎立 ②具体的事実に対する基準のあてはめ ③結論としての評価 の三段階を踏みます。順を追って説明すると,①評価するには基準が必要ですので自分の評価基準となる規範を,何故その規範を使う事が正当なのか,その理由を含めて説明します。②次に,その規範に具体的事実がどのように当てはまるか理由を付して説明します。これがある事によって,その文書を読んだ人が,反論することが可能になります。逆に言うとこれによって自らの主張が,言いっぱなしでなく,反論にも応じられる責任ある言論となるわけです。③ ①と②の結果を受けて,その現実をどう評価するか,その結論を書きます。③の結論としての評価は,①と②がある事で,恣意的なものではなく,きちんとした理由のあるものであり,反論にも対応できる責任ある主張であると,人に伝えることができるわけです。

 この観点から和田議員のこのブログ記事を読むとどうなるでしょう? ①規範の鼎立については,一応「週刊誌や他のメディアの情報をもとにした質問は、素人でも出来るレベルの低い質問である」とされています。しかし残念ながらその理由が全く記載されていません。情報のソースは別段何でもよいでしょうし,確認する時間が無いからこそ質問することもあるでしょうし,週刊誌や他のメディアの情報をもとにしていても,良い質問も悪い質問もある事は,他ならぬ望月記者が立証しています。これだけではなぜこの規範が正しいのか,その理由がさっぱりわかりません。理由を述べない規範の鼎立は,単に自分の思いこみを述べているだけと評価されてもやむを得ないものと思います。
 次に②の具体的事実のあてはめですが,実のところ和田議員の記事にはこの部分が全くありません。ただ単に,「文春オンラインのインタビューでも望月記者は思い込みが多い」と根拠を示さず断定しているだけで,具体的に望月記者のどの記事が,どのような理由で思いこみと断定できるのか,それこそ和田議員はその裏付けを取ったのか,全くわかりません。規範に対する具体的事実のあてはめが無い主張は,相手からは反論のしようも無い無責任な言いっぱなしと評価されてもやむを得ないものと思います。
 ③の評価は,明言されていませんが(それ自体文書としては減点項目です。)文脈からは要するに「望月記者の質問はクオリティーが低い」と言っているものと思われます。ところがこの評価には,①鼎立された規範の理由が示されていない ②具体的事実に対する規範のあてはめが無いので,結局のところ,根拠のない思い込みに基づいて,具体的事実を示さずになされた無責任な言いっぱなしの評価にすぎないとしか言いようがないということになります。

 という事で,少なくとも弁護士的視点から見る限り,和田議員のこのブログ記事は,水準に達しているとは中々言い難いものであるとしか,評価しようがないように思います。結構な確率で和田議員からカウンターで,私のこの記事に対する評価がなされるのかもしれませんが,その時は是非,他山(自山)の石として,大いに参考にさせて頂こうと思います。


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