新潟市が農業特区に指定されたことが県内で大きなニュースになっています。まずは同県人として嬉しい限りでありおめでとうと申し上げたいと思います。

ただ、別段ケチをつけたいのではないのですが、特区の内容は

①農地の移転手続き事務などを市が分担
②農業生産法人の要件緩和
③信用保証制度の農業分野への導入
④農地での食堂の設置など6次産業化の推進
⑤独自の食品機能表示制度の活用による食品の高付加価値化
⑥農業ベンチャーの創業支援拡充

と言うもので、非常に正直に言って「この程度の規制を緩和しても、どうってことはないんじゃないでしょうか?」(我が家は養豚農家ですので、この辺、詳しいです。)というか、「実はこれ、特区と言う名を借りた、新たな公共事業じゃないんでしょうか?」と言いたくなります。

なにせ
①は、正直行政内部の業務分担にすぎません。
②は、「常時従事する構成員・理事の過半は60日以上の農作業に従事する事。」と言う規制を緩和するものですが、ちょっと考えるとわかる通り、そもそも「60日以上の農作業を従事していること。」を検証することは実質的になされておらず、正直形骸化していた規制を実情に合わせただけと言えます。
③の信用保証はまあありがたいと言えば有難いですが、別段今でも農協がお金を貸してくれますし、銀行だって条件次第で貸してくれますから、融資の機会が少し広がっただけです。また信用保証は国のお金ですから、要するにこれは、国のお金を農業に突っ込むということにすぎません。
④はどうやら今回の特区の目玉のようですが、正直なんだかなぁと思います。別に今でも「農地転用」と言って、許可を得て農地を別用途に使うことは可能です。この許可を取るのは確かに面倒で(私自身法律事務所で仕事として行ったりしますのでこれも詳しいです。)これがなくなればそれはそれで楽なんでしょうが、そもそも農地でレストランを経営することそれ自体が大変で(レストランは人口の多い街中に作った方が集客上有利に決まっています。)、その困難さに対して、農地転用の困難さなど微々たるものです。これがなくなったからと言って農地に建てたレストランが流行るようになるとはあまり思えません。
⑤は工夫次第なのでしょうが、今現在の食品表示に、消費に結びつくほどの改善余地があるとは思えません。
⑥は如何にもな自民党政治で、「それは規制緩和でもなんでもなく、単なる補助金行政ですし、別段特区だけでやる理由は全くないでしょう?」と言うことになります。

 結局今回の農業特区は、「株式会社の農地所有」と言った実質的な規制緩和には一切踏み込まず、ほとんど意味のない規制や、単なる手続き要件を緩和しただけの弥縫策に、信用保証や補助金をつぎ込んだ、「特区と言う名の新たな公共事業」にすぎないように思います。これで新潟市の農業が発展するとか、農業ベンチャーが出来るとかと言うのは、あまりに楽観的に過ぎるでしょう。

 また確かに新潟市の農業生産額は650億円で県内随一であり、魚沼・南魚沼合わせた230億円の3倍弱ではありますが、基本的にはこれは農地が2900haで魚沼・南魚沼併せた900haの3倍弱あるからです。逆に言えば、稲作に頼る新潟(ひいては日本の)の農業は、正直何処でも大差なく、この程度の改革で地域を限定する必要は薄いのだから、「魚沼コシヒカリ」「新潟コシヒカリ」と言うブランドを持つ魚沼地域を含む全県(最終的には全国に)に広げる方がはるかに合理的だといえます。

 「特区」は本来、産業の発展の妨げになっているが、既得権益を受ける人の抵抗が大きくその撤廃が容易でない規制を、地域を限定して撤廃することで、補助金・国の財政に頼らない経済振興を目指すものです。
 今回の特区のように、「ほとんど意味のない規制を緩和して「改革」を行っている振りをしつつ、実態は補助金漬けの振興策を、特定の地域に誘致することで、与党が特定の地域に利益誘導を行う。」のでは、その効果は、今までの公共事業と同じく、国の財政的負担だけを増やした一時的なものに終わるでしょう。

 与党の国会議員には、「特区と言う名の新たな公共事業」を新潟市と言う限られた地域に誘致することに現を抜かすのではなく、国の健全財政と産業の発展に本当に資する、本当の規制緩和の計画立案を行って頂きたいものだと、私は思います。


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