ニュースの感想

自民党とTPPと原子力

  • 米山 隆一
  • at 2013/2/22 06:32:46

 安倍総理が訪米し、「聖域なき関税自由化ではない感触が得られた。」として、TPP交渉に参加する方針を固めたとの報道がなされています。私は何度も書いた通り当初よりTPP交渉推進派であり、結論には賛成です。

 勿論「故郷を守るためにTPP交渉参加には絶対反対!」と掲げた自民党候補に敗れた身としては複雑な心境もありますが、こうやって、口当たりのいいスローガンを掲げて選挙に勝ったうえで、なし崩し的に事実を積み重ねて現実的政策を実行するのが「自民党流」なのかもしれませんし、「大人の政治手法」なのかもしれないとも思います。

 しかしこの手法は、せんじ詰めれば、「どうせ有権者には政策は理解できない。だから選挙の時は口当たりのいいことを言い、選挙に勝ったら現実的政策を取ればいいんだ。」ということであり、短期的には機能する(現に前述のとおり、前回の選挙では見事に機能しました)としても、長期的には極めて問題の大きいものであることを、自民党自身の原子力政策の失敗から学ぶべきだと、私は考えます。

 思えば自民党は長きにわたって「原子力は絶対安全です。」というスローガンを掲げて原子力政策を推進してきました。そこには、「説明しても、どうせ有権者は冷静に原子力のメリットとデメリットを比較できない。それなら『絶対安全』と言って選挙に勝って、原子力政策を推し進めればいい。」という欺瞞があったことを、私は否定できないと思います。
 その結果日本の原発は「今『絶対安全』なのだから、今後『より安全』にするために、不断の改善を行う必要はない。」という陥穽に陥り、福島第1原発は、津波からの安全を確保する技術があったにもかかわらずそれを導入することなく、大事故を起こしました。
 原子力政策を推進するなら、たとえ困難でも、有権者に正直にそのメリットとデメリットを提示すべきであり、そうすることで初めて、デメリットを減らしメリットを最大限に生かす政策を不断に実行し、大事故を防ぎ、長期的に良い結果を得ることが出来るのだというのが、我々が今回の原子力事故から学ぶべき最大の教訓だと、私は思います。

 TPPも同じです。どう聖域を設けてみても、TPPは本質的に競争政策であり、貿易自由化政策です。農業も商業も工業も、新たに創設される「環太平洋(日米東南アジア)経済圏」という巨大なブロック内での競争に対応できなければ、没落します。あたり前のことですが、聖域のあるなしにかかわらず、TPPにはメリットもあれば、デメリットもあるのです。
 にもかかわらず、「聖域があるから絶対大丈夫」という相変わらずの「自民党流大人の欺瞞」の下で、相変わらずの小規模零細保護政策を続けたら、最後の最後に日本は、東南アジアでの競争に敗れ、原子力事故と同じような大崩壊を起こすでしょう(現に今「日本には技術があるから大丈夫」という欺瞞が、パナソニックやシャープの崩壊という危機を起こしています)。
 TPPに限らず、どんな政策でもメリットとデメリットがあるのは当然です。私は安倍首相には、「聖域を設けられる感触を得たから、TPPに参加するかもしれない。でもたとえ参加しても、国益は守るから絶対大丈夫。」などという甘い玉虫色の言葉ではなく、「TPPにはメリットもデメリットもある。しかし日本が生き残るには、TPPに参加したうえで、勝ち残るしかない。自民党はデメリットを減らし、メリットを最大限に生かす不断の努力をするので、国民の皆さんも全力で頑張ってほしい。」と明言していただきたいと思いますし、そうしてこそ、日本は世界との競争に勝って真の長期的繁栄を手にすることが出来るのだと思います。 


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コメント

自民党が掲げているTPPへの参加条件は聖域無き関税の撤廃についてだけでなく、その他にも実はありますね。↓参照

http://www.jimin.jp/activity/colum/116025.html

これらは自民党の出した約束でありますので、これを守らなければウソつきと批判されますし、約束を守りながらTPPに参加できるとは考え難いものですね。


さて、どちらに転ぶのでしょうか・・・



私は行き過ぎた自由競争と市場原理主義には大反対でありますのでTPP参加にはもちろん反対です。

そして、日本全体として一体なんのメリットがあるのか全くわかりません。

一部の企業のみの利益となり、国内全体としてはいっそう格差を拡大するだけで貧困と失業をわざわざ増やすだけのような気がするのですが。


貿易の本来の目的とは?

経済の語源である「経世済民」の意味とは?


これらを考えたときに低価格を競争するだけの貿易など合成の誤謬を生むだけであり経済政策として失敗と分かります。

少なくともデフレという状況下では。

今現在日本で起きている産業の空洞化、平均賃金の低下を見ていただければ明らかではないでしょうか。

部分的に賛成できる点はあっても、総論として反対です。

ユーロの危機もリーマンショックも、共に金融のシステムの問題を浮き彫りにしていますので特に早急に規制を強化するべきと思います。

  • Posted by 小千谷市民
  • at 2013/02/25 22:42:57

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