飲酒運転の罪と罰

  • 米山 隆一
  • at 2006/9/23 22:34:33
 飲酒運転に関する議論が華やかです。勿論飲酒運転は決して容認されるべきではありません。ただ私は、飲酒運転対策として「厳罰化一辺倒」と「マスコミによる徹底的なバッシング」にはやや違和感を覚えます。
 「飲酒運転は殺人未遂と同じ」という論調が良く見られます。結果としてそれは事実です。しかしやる側の意図としては、「殺人の着手」とは大きな差があります。飲酒運転をやる人は、基本的に「自分は人を殺すかもしれない」と思ってやるわけではなく、「自分は大丈夫」と思ってやります。それは単なる甘えに過ぎませんが、少なくとも「自分は悪いことをしている、自分の行為が重大な結果を招くかもしれない」と言う認識はないわけです。
 私はだから飲酒運転を許すべきだと言いたいのではありません。この認識の欠如ゆえに、厳罰化や厳しい非難の抑止効果は、思っているより少ないだろうと言いたいのです。「自分は大丈夫」「自分は見つからない」と思っている人に、「万一違反が見つかったら厳しい罰を受ける」といっても、「いや自分は大丈夫」と言う馬耳東風な答えが返ってくるだけだからです。飲酒運転厳罰化直後に激減した飲酒運転が、最近又増加傾向にあるのは、このことの証左であるように思います。厳罰化で、「見つかったら大変だ」と思う常識的な層は、飲酒運転を慎むようになりました。しかし世の中には、あくまで「自分は大丈夫」と思い続ける、悪意といえるほどに暢気な人が、一定割合必ずいます。そういった人たちは、一旦は罰の大きさにびっくりしたけれど、しばらくしたら「やっぱり自分は大丈夫」と思い出したのだと思います。
 厳罰化や徹底的なバッシングはこういった層の人たちには、恐らくは抑止ではなく、むしろ「ひき逃げ」や「逃亡」の増加と言う結果をもたらします。「自分は大丈夫」と根拠もなく信じ込んでいた。ところが目の前に事実として重大な結果が出現してしまっている。その時初めて厳罰とマスコミからの激しい非難を思い出す。パニックになって逃げ出すのはそれほど想像に難いことではないでしょう。勿論「ひき逃げの厳罰化」は一定の効果があるでしょうが、ある程度以上になるとそれはパニックになって逃げ出してしまった人を「逃げた以上引き返せない」と思わせてしまう可能性があります。そしてこれは、「被害者の救済」を第一義的に考えるなら、決して望ましい事ではありません。
 ではどうすべきでしょうか?飲酒運転を現行法規で厳しく罰すべきこと、ひき逃げの際の罰則を飲酒運転と同程度に引き上げるべきことに異論はありません。又「暢気」な人を減らす為にマスコミを通じた啓蒙活動も必要でしょう。ですが「暢気」な人に何よりも効果があるのは、「取り締まりの回数を増やすこと」に尽きると、私は思います。「暢気な人」は根拠もなく暢気でいられるわけではありません。「何度もやったけど大丈夫だった−罪を犯したけれど罰せられなかった」という経験が根拠となって暢気を増幅しています。「10回やったら10回つかまる」状態は不可能として、「10回やったら1回はつかまる」状態にするだけで、こういった層の暢気度は大きく減ると思います。
 飲酒運転に限らず、「罰」のパラメーターには、「罰」の重さと「罪」が罰せられる確率である「摘発率」の二つがあり、「罰」による「罪」の抑止効果は、「重さ」x「摘発率」の掛け算で決まるように思います。「罰の重さ」のみを大きくする厳罰化は、「一罰百戒」で確かに常識的な人には効果があります。「一罰」ですみますから、取り締まる側は楽といえば楽ですし、コストもかかりません。また「悪いことをした人を厳しく罰する」のは第三者からは一種のカタルシスもあります。しかしそれは、ある限度を超えると、「予防効果」よりは「悪意的暢気層」を逃亡へと駆り立てる効果の方が大きくなってしまうのであり、「罰」によって最大の「罪」の抑止効果を得るには、両者のバランスが大事だと、私は思います。
 飲酒運転の厳罰化による「罰の重さ」の引き上げはひき逃げの罰を飲酒運転並とすることでひと段落させて、警察が自ら汗をかいて小まめに飲み屋街周辺で飲酒運転の取締りとをおこなって「摘発率」を上げること−「罪」は必ずとは言わないまでも、相当の確率で罰っせられる状況を作ることが、現状ではもっとも効果的な策なのではないでしょうか。勿論それは警察にとって大変なことですし、一定のコスト増をもたらしますが、副次的に「公平感」「周辺治安の向上」そして「警察への信頼」と言う結果をもたらすでしょう。そして実のところこれこそが、警察の地道な努力で、飲酒運転に限らず一般の犯罪の摘発率をあげ、「公平感」と「治安」と「警察への信頼」を取り戻すことこそが、現在の日本が最も必要としているものあるように、私は思います
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