ニュースの感想

今こそTPPと、税と社会保障の一体改革の議論を!

 菅総理大臣が、TPP、税と社会保障の一体改革についてのとりまとめを、公約としていた6月から延期すると表明しました。現在の状況が状況ですから、「被災地が一段落するまでとりあえず延期する」事に異存のある人は、いないでしょう。しかし私は是非、「復旧の本格化にあたっては、TPPと税と社会保障の一体改革についてのみならず、是非、日本の将来像について議論を深めていただきたい」と思います。

 言わずもがなではあるでしょうが、今回の震災復興は、今までの地震における震災復興がほとんど参考にならないほどに、厳しいものになると、私は思います。
 世界各国は、日本の震災復興を支援してはくれます。しかし、世界市場で、生産と物流が停滞した日本製品のシェアを奪うことまでも、待ってはくれないでしょう。その上、今既に中国では、「震災で日本から部品を輸入できないのは痛手だが、かえってそれは中国製造業の独り立ちを早めるチャンスになる」という論調が出ています。日本の生産や物流の停滞は、単純にそのシェアを他国に奪われるだけではなく、他国が日本製品を代替する技術を開発する機会を与えることになります。各国のその努力を、非難する権利は、我々にはありません。震災復興は、日本の製造業がどうやって失地を回復するのかという、グランドデザインと伴に作られなければ、意味をなさないのです。
私は日本経済が十分な震災復興をなす力を再び獲得する為には、TPPに加入し、無関税で工業製品を加盟国に輸出できる基盤を作ることが必須だと考えます。そしてその為には、震災復興が喫緊の課題である今こそ、TPPの議論から逃げてはいけないと、思います。

 TPP問題のもう一つの側面である農業問題にも、震災は大きな影響を与えます。一刻も早い復旧が望まれるのはもちろんですが、現実問題として、東北地方の農業・漁業生産は、数年間はかなり減少するでしょう。例え田んぼや畑が整備され、漁港が復活しても、今まで高齢・零細農漁業者がだましだまし支えてきた産業構造が復活させるには、大きな困難が伴うでしょう。今までの震災なら、「最大限の援助で今まで通りの農漁業を復活させる」事が可能でしたが、今回はあまりにも規模が違います。今回もまた同じ事を繰り返したら、日本の財政は恐らく完全に破綻し、本来なすべき震災復興それ自体が、不可能になってしまいます。私は、是非東北の地に、新たな「大規模で低コストな農業・漁業」を構築し、それでも尚足りない部分は外国から輸入すべきだと、考えます。その為には、TPPへの加盟は、むしろプラスではないかと、私は思います。

 そして「東北の農村の復興」は、そのまま「社会保障の再構築」と言う問題を、私達に突きつけます。正確な統計は分かりませんが、地域柄、今回被災された方々の恐らく半分以上が、国民年金の受給者だと思われます。皆さんご承知の通り、国民年金の満額は年80万円程に過ぎず、到底一般の人が安心して暮らせる額ではありません。にもかかわらず、多くの農村で年金生活が成り立っているのは、米の生産や漁業等の地域産業から副収入がえられ、野菜等がそれなりに自給できていたからにほかなりません。最大限の復興がなされたとしても、被災した多くの高齢者が、かつてと同じだけの収入・収穫を農業や漁業、地域産業から得ることは恐らく不可能でしょう。ここでも、これまでの震災なら、「被災者を金銭的に支援する」ことで解決可能でした。しかし今回は、被災者だけでも40万人います。「被災で金銭的に行き詰まった高齢者」が、100万人単位になりかねないというのは、あながち大げさではないでしょう。この方々に単純にお金を配ったら、矢張り日本の財政が破綻して、復興が不可能になってしまうでしょう。
 私は復興の為にこそ、誰もが、基礎年金だけで、最低限の生活は送れる状態を作る為の、社会保障制度を作り上げなければならないと、思います。その為には今こそ、税と社会保障の一体改革の議論を、進めなければなりません。

 震災も、津波も、そしてそれに引き続いて起こった原発事故も、最大限の不幸であることは、否定のしようもありません。しかし、起こってしまった以上、我々には、この不幸を、飛躍へのチャンスと代える以外に、復興の手だてはありません。
 期せずしてこの大災害は、産業構造問題、農・漁業問題、高齢化問題、社会保障問題という日本の問題点をあぶり出し、その未曾有の規模で、「今まで通りの復旧」という小手先の対策を拒んでいます。
 この大いなる不幸を大いなるチャンスに代える為にこそ、私達は、被災地の支援と復旧と同時に、TPPや税と社会保障の一体改革、エネルギー政策のあり方等、様々な問題を、真剣に議論しなければならないと、私は考えます。

 


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コメント

ご無沙汰しております。
私の勤務している病院では、大震災時には大きな混乱は無く、エレベーターが止まったくらいでしたが、テレビを見ると信じ難い映像に釘付けとなっていました。その後は計画停電に振り回され大変でしたが…。
当病院としてできること、私個人としてできることを考えながらブログを読ませていただきました。

  • Posted by 前岡
  • at 2011/04/04 14:40:35

お元気で何よりです!ずっと拝見しておりますが、些か心配してます。(笑)

政策の対立以前の問題で、現実問題に近付いた積もりの管の戯言に一々付き合うのが、如何に非現実的か!?(笑)
ましてや、同じ民主党議員同士がウソツキ!ペテン師!と罵ります。(笑)

目の前の美味しい一粒よりも、本筋を外さない米山隆一さんが私達の本来応援する政治家だと思いますが…。
誰よりも速く結論を述べる必要ないですよ!
速かろうが、遅かろうか、本心から正しいと思える言葉を述べるべきです。

正直言いますと、米山さんらしからぬキャッチと、その後の沈黙に、相当に失望と落胆を感じております。
だけど、僕よりもお姉様達が貴方の目を覚ませると信じています。

孤高でも、正論を真っ直ぐに語って下さるのが米山さんだ!って、みんながずっと信じています。

  • Posted by 長岡市民(ノリ)
  • at 2011/07/11 02:33:40

本気で真剣に取り組んでくれる政治家の方がいることを、日本国民が実感できる世の中になることを期待しております。

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