米山隆一の10年先のために

とてもとても久しぶりのアップで恐縮です。

現在私の司法修習は弁護士修習となっており、事務所で弁護を引き受けている被疑者の方に接見するために、時折事務所の先生に同行して、「小菅拘置所」に赴きます。

この「小菅拘置所」は、判決前の被疑者、及び死刑確定囚を拘置しておく所であると同時に死刑執行施設もあって、つい先だって、千葉法相が自ら死刑執行に立ち会われてニュースになっていました。

そんな小菅拘置所に続く道は、まるでその為に作ったかのように、街路樹一つない殺風景な一本道で、時に小さなお子さん連れの母親が、時に足下もおぼつかない老夫婦が、刺さるように降り注ぐ日差しのなか押し黙って歩く光景は、まるで「NHKドラマ」の一場面のようです。

さて、この拘置所の入り口の付近には、接見に来た方々が被疑者に差し入れるお菓子や日用品を買う為の「差入れ屋」というお店があります（「被疑者」は有罪が確定する前の方で、「推定無罪」の原則が働きますから、わりと自由に差入れが出来ます）。初めて小菅の拘置所に行ったときこの「差入れ屋さん」に「牛乳差し入れます」という看板が立っている事に気付いて私は同行の先生に、「あれ、一体どういう事ですか?」と尋ねました。すると先生は、「ああ、あれね。あのお店に、被疑者の家族とかが例えば1万円預けるんだよ。そうすると、あのお店の人が、家族に代わって、例えば3ヶ月間、毎日牛乳を被疑者に差し入れてくれるのさ。ちょっとHumanなサービスだろ」と答えられました。

自分の知り合いが拘置所に入ったとしたら、1回ぐらい菓子折を持って接見に行くと言う人は、それほどまれではないだろうと思います。でも、拘置所に入ったその人が毎朝牛乳を飲めるよう、「差入れ屋さん」に1万円置いて頼んでくれる人は、そう多くはないでしょう。逮捕されて拘置所に入っている、そんな状態でも尚そこまでしてくれるのは、母親か、奥さんか、いずれにせよ余程その人を愛している人に限られるでしょう。と、そんな事を考えていたら、ふと、学生時代に良く聞いた Eric Clapton の Tears in Heaven を思い出してしまいました。

この歌のさびに、「Would you know my name, if I saw you in heaven （天国で会ったら、僕の名前を覚えていてくれるかい）.  Would be the same, if I saw you in heaven（天国で会ったら、昔と同じように、つきあってくれるかい）」と言うフレーズがあります。「もし僕が東京拘置所に入ったら、あなたは僕に牛乳を差し入れてくれますか・・・」冗談のようですが、大真面目に、色々と考えさせられてしまいます。

さほど頻繁というわけにはいかないのですが、今後は折々にアップして参りますので、どうぞ宜しくお願いいたします。