昨年の沖縄知事選でのこと。投票日当日の“最終出口調査”で読売新聞と毎日新聞は共に約7%差で糸数優勢と集計していました。しかし結果は37,818票差で仲井真弘多氏が当選しました。

 実は、従前の不在者投票より遥かに簡便化された「期日前投票制度」により、かなり多くの仲井真陣営の「期日前投票」がありました。従って多少の糸数優勢なら勝利を確信していましたが7%なら逆転される危険性あり、だったのです。因みに共同通信、朝日新聞、NHKの“御三家”では1%前後で糸数優勢でした。結果的に共同、朝日、NHKの数字が正しかったのですが、何故こんなに大きな違いが出たのでしょうか?(当日1%優勢でも期日前投票の仲井真陣営の貯金が5~6%はあったはず)。結果から見れば、外れた出口調査については調査のやり方にムラがあったり、調査を実施する場所の選定が適切でなかったものと推測されます。

 また、先の参議院選挙でも投票日のわずか2日前の朝日新聞で最新の世論調査に基づく選挙情勢最終版を掲載していました。その中の東京選挙区では丸川珠代候補は7.8ポイントと当選5議席中7番目、しかも共産党の田村智子氏の10.9ポイントより3.1ポイントも下回るものだったのです。従って、記事の書き方も“丸川7番目で懸命に追う”というものでしたが、結果はご承知のとおり、丸川氏は4位で当選したのです。

何故、こうしたことが起こるのでしょうか?

 その理由として、“昨今の世論調査は携帯電話層の声を全く反映していない”ことが一番に挙げられます。朝日の訪問面接調査や毎日の郵送調査など一部変則的な調査手法もありますが、今やマスコミ調査も政党調査も固定電話への電話調査が主流。そこに問題があるのです。

 20~40代前半のマジョリティといわれる“携帯電話層”は、①固定電話を持っていない ②持っていても調査が行われる夜8時前には帰宅していない ③家にいても知らない番号の着信には出ない ④出ても調査に2~3分も答えるのは“面倒”だからすぐ切る、等々の理由で結果として調査の電話口には出ない、ケースが多いのです。

 逆にそうした電話調査によく出るのは①政治に深い関心を持つ人 ②政治フリークの人 ③比較的暇な人、が多く、高年齢、高学歴、無職、女性、学生が多くなるのです。そうした人たちの中での「支持政党なし」=無党派層、浮動票という分析自体が、現実と乖離している結果といえます。

 さて、私が考える本当の浮動票、無党派層の声はまさにこの携帯電話層にあると思います。先の参院選で言えば、携帯電話層の保守、自民支持層の中では保坂氏より丸川氏支持の方が圧倒的に多いはずです。朝日の調査結果は保坂氏が13.4ポイントで丸川氏の7.8ポイントにダブルスコアに近い数字をあげていながら6位で落選。そこに固定電話調査結果の落とし穴が見えるのです。

 それではどうすればそうした携帯電話層の声が聞けるのでしょうか。米国では「モールインタビュー」と称し、そうした人の声を生で聞くために郊外型大店舗、即ちショッピングモールに出向いて有権者の生の声を集めるのです。

 例えば、土曜日のモールの1階(家電製品や書店等がある)に昼頃行けば20~30代男性サラリーマンが多いとか、ウィークデーの夕方17時過ぎに地下1階の食料品売場に行けば、若い主婦が多い(大抵年配の主婦はもっと早い時間に夕食の買物に来る)というように、時間帯と場所を選別することにより各ターゲット別のイシュー調査ができるのです。日本では、東京を例に挙げるとサラリーマン層の声を聴くなら新橋や丸の内とか、年配層の声を聴くなら巣鴨のとげぬき地蔵とかがその代表例です。具体的にはイオンなどの大ショッピングセンターに行けばウィークデーのフロアと時間帯、土日の時間帯、売場によって各層の集まるところが明確でターゲット別のインタビューが可能です。

 電話を使った定量型世論調査(300~1000サンプル)も確かに有効な手段ではありますが、それ以上に、ショッピングセンターでのヒアリングは各層の声を聴くには有効な手段なのです。しかし、こうした街頭調査を大々的にやろうとすると事前に許可が必要となり、面倒なことも多いので、実際に行う場合、店舗の経営者がよほど協力的でない限りは店舗外の街頭(公道)等で行うのが望ましいでしょう。街頭でも曜日、時間帯によって層が分かれます。

 また、選挙キャンペーングッズを作成する際も、選対内部の人だけで自己満足的に作ろうというのではなく、外の生の各層の声をヒアリングしながら作っていくことも必勝への1つの手法です。なぜなら、候補者やスタッフ、選対幹部の目の高さと、一般(政治無関心)層の目の高さは全く違うと思った方がよいからです。

 つまり、よりよい候補者イメージを打ち出すために、ポスターでA案、B案どちらにしようかと迷ったら思い切って街頭でインタビューしてみることです。たとえ100人に聞いて5人しか答えてくれなくても“街の反応”は“事務所内の反応”より確実な一票につながります。

 無関心層、無党派層、浮動票の動向を世論調査結果から読み取ることはまず不可能と思ったほうがよいでしょう


三浦博史のプロフィール
 1951年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒。安田信託銀行勤務を経て、 故椎名素夫代議士公設秘書。1988年米国国務省個人招聘プログラムにより、 米国の政治・選挙事情視察。1989年総合選挙プランニング会社「アスク株式会社」設立。代表取締役として現在に到る。以来、数々の国政・首長選挙を手が け、2006年11月仲井真弘多沖縄県知事、2007年東京都知事選では石原慎太郎陣営の選挙参謀を務めた。日本選挙学会会員、日本世論調査研究会会員。
著書に『選挙立候補マニュアル』(ビジネス社)、『洗脳選挙』(光文社)、 『舞台ウラの選挙』(青春新書)、神様に選ばれるただひとつの法則(フォレスト出版)。明治学院大学法学部非常勤講師。


著書紹介
本書は近年著者が携わってきた多くの選挙の経験をベースに、選挙マニュアル最新・最強バージョンとして書き下ろしたものである。特に先般の米国大統領選挙やネット解禁も踏まえたIT選挙事情や、首長選挙必須の(ローカル)マニフェスト選挙についても必要なことはすべて網羅した。

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